建設系廃棄物排出事業者に係る廃棄物処理法令の改正について
平成22年の廃棄物処理法の改正のうち、建設系廃棄物に関わる改正の概要をまとめたページです。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年12月27日法律第137号。以下「法」といいます。)及び同法政省令が改正され、建設系廃棄物の排出事業者に関する規定が変わりましたので、概要をお知らせします。
建設系廃棄物に関する改正規定
排出事業者の元請一元化
建設工事の注文者から直接建設工事を請け負った元請業者が排出事業者であると定められました。(法第21条の3第1項)
元請業者から請け負って、解体工事等を行う下請業者は、その工事で生ずる廃棄物を、排出事業者として処理したり、他人に委託したりすることはできません。
元請一元化:法第21条の3第1項に定義づけられた内容
排出事業者を元請業者に定義しているのは、法第21条の3第1項です。
次のように定義されています。
土木建築に関する工事(注1)が数次の請負によって行われる場合、その建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理についての廃棄物処理法の適用は、当該建設工事(注2)の注文者から直接建設工事を請け負った建設業(注3)を営む者(元請業者)を事業者とする。
注1 建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む。
注2 他の者から請け負ったものを除く。
注3 建設工事を請け負う営業(その請け負った建設工事を他の者に請け負わせて営むものを含む。)をいう。
排出事業者元請一元化に関する例外規定
元請業者が排出事業者と定義づけられたことで予想される3つの支障について、それぞれ例外規定が設けられました。
支障1
下請負人が建設工事現場で保管を行う場合保管基準が適用されないと、下請負人による不適正な保管が建設工事現場で行われる可能性がある。
↓
法第21条の3第2項の例外規定により、下請負人が建設工事現場内において産業廃棄物の保管を行う場合にも、産業廃棄物保管基準が適用されます。
支障2
収集運搬業の許可がない下請負人が一切廃棄物の運搬ができないと、廃棄物が建設工事現場に放置されるなどの事態を招くおそれがある。
↓
法第21条の3第3項の例外規定により、次の条件にすべて該当する場合は、下請負人が事業者とみなされ、下請負人の廃棄物として収集運搬業の許可なく運搬することが可能です。
<法第21条の3第3項の例外規定の詳細>
(1)次のいずれかに該当する工事に伴い生ずる廃棄物の運搬であること
解体工事、新築工事又は増築工事以外の建設工事(維持修繕工事)であって、その請負代金(発注者からの元請負代金)の額が500万円以下である工事
【注意】
正当な理由(事故、災害等により建築物その他の工作物が崩壊しつつあり、緊急に修繕の必要がある場合など)があって契約を分割したときを除いて、1つの建設工事を同じ者が2つ以上の契約に分割して請け負う場合は、1つの契約で請け負ったものとみなされます。
引き渡しがされた建築物等の瑕疵の補修工事であって、その請負代金相当額が500万円以下である工事
【注意】
「瑕疵の補修工事」とは、新築工事等の完了後、それらの工事の一環として行われる修繕工事をいいます。新築工事等の請負代金の額は500万円を超えていても、瑕疵の補修工事の請負代金相当額が500万円以下であれば、この要件に該当します。
(2)特別管理廃棄物以外の廃棄物の運搬であること
(3)1回あたりの運搬される量について、巻尺などを用いた簡易な方法により1立方メートル以下であることが測定できること又は1立方メートル以下であることが明らかな運搬容器を用いて運搬されること
(4)神奈川県内あるいは東京都、山梨県又は静岡県内(隣接都県)に所在する元請業者が所有等する施設に運搬されること
【注意】
元請業者が所有等する施設とは、次のとおりです。
元請業者が第3者から貸借している施設
元請業者が下請負人又は中間処理業者から貸借している施設
元請業者と廃棄物の処理の委託契約をした収集運搬業者の積替え保管施設
元請業者と廃棄物の処理の委託契約をした中間処分業者の中間処理施設
(5)運搬途中において保管が行われないこと
(6)個別の建設工事にかかる書面による請負契約で下請負人が運搬を行うことが定められていること(建設工事が基本契約書に基づくものである場合、個別の建設工事ごとに必要な事項を記載した別紙を交わす旨を基本契約書に記載し、別紙を作成することで代えられる)
この規定により、下請負人が自らの廃棄物として運搬する場合、運搬車等に、運搬する廃棄物が環境省令で定める廃棄物であることを証する書面として、契約書(基本契約書の場合は(6)の別紙(写しでも可)を含む)の写し等の書面等の備え付けが必要です。
なお、下請負人が運搬する場合、その運搬部分に関しては、マニフェストの交付は不要です。
支障3
やむなく下請負人が処理を委託するような例外的な事例について、委託基準が適用されないと不適正処置が行われる可能性がある。
↓
法第21条の3第4項の例外規定により、下請負人が建設系産業廃棄物を委託する場合、委託基準が適用されます。
なお、この規定は、下請負人が廃棄物の処理を委託することを推奨する趣旨ではありません。
この例外規定が規定されることにあわせて、措置命令の対象が広がりましたので、下請負人が不適正な処分等を行った場合の元請業者(一定の要件に該当する場合を除く)に対しても支障等の除去の措置を行うよう命令が発出される場合があります。
また、元請業者が、許可を持っていない下請負人に対して、廃棄物の処理を行うよう口頭で指示し、下請負人がその指示等に従って廃棄物の処理を他人に委託したような場合は、元請業者が委託基準に違反していることになります。
排出事業者が産業廃棄物を事業場外で保管する場合の事前届出
排出事業者が、建設系産業廃棄物について、その廃棄物が生じた事業場以外の300平方メートル以上の保管場所で保管する場合、法に基づく事前届出が必要となりました。(法第12条第3項)
改正法に基づく事前届出と県条例に基づく事前届出との関係
本県では、「神奈川県不適正処理の防止等に関する条例」を定め、廃棄物が生じた事業場以外の100平方メートル以上の保管場所で保管する場合は、この条例に基づく事前の届出が必要としていました(横浜市、川崎市及び相模原市を除きます。なお、相模原市は、市条例に基づく届出が必要です。)。
改正法の施行に伴い、県条例を改正し、法と県条例が重複する場合は、県条例の適用を平成23年4月1日から除外することとしました。
法及び県条例に基づく届出については、県条例に関する次のホームページに届出の手引きを掲載していますので、こちらをご覧ください。
その他排出事業者に関する主な改正規定
排出事業者による処理の状況に関する確認の努力義務の明確化
排出事業者は、その排出する産業廃棄物について責任を負わなければならない(排出者責任)こととなっています。
排出者責任の強化として、排出事業者が運搬又は処分を他人に委託する場合には、その産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行うように努めなければならないこととなりました。
帳簿の作成義務の拡大
産業廃棄物を自ら小規模焼却施設で焼却したり、事業場外で自ら処分又は再生を行ったりする場合に、帳簿の作成が必要になりました。
新たに帳簿の作成義務対象となったのは、次の2つの区分の排出事業者です。
・事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業場内に設置された、許可対象とされていない小規模な焼却施設において、自ら当該産業廃棄物の焼却を行う事業者
・事業場の外において自ら当該産業廃棄物の処分又は再生を行う事業者
産業廃棄物引き渡し時のマニフェスト交付の徹底
これまで、排出事業者には、産業廃棄物の引渡しの際に産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付が義務付けられていました。
改正法では、さらにマニフェストの交付の徹底を図るため、産業廃棄物の運搬・処分の受託者に、マニフェストの交付を受けずに産業廃棄物の引き渡しを受けることが禁止されました。
この規定に違反した受託者は、マニフェストを交付しなかった受託者と同様の罰則(6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金)が適用されます。
産業廃棄物管理票(マニフェスト)の保存義務の一部追加
マニフェストの排出者控えであるいわゆるA票について、排出事業者に明確に保存が義務づけられました(5年間)。
産業廃棄物処理業者による処理が困難となった場合の委託者への通知
産業廃棄物処理業者は、受託した産業廃棄物の処理を行うことが困難となった場合、委託した者に対してそのことを通知しなければならないこととなりました。
また、この通知を受けた者は、マニフェストが一定の期間のうちに返送されなかった場合と同様に、処理の状況を把握して、適切な措置を講じなければならないこととなりました。
不法投棄等を行った場合の量刑の強化等
不法投棄等を従業員が行った場合に、その法人に課せられる罰金の上限が1億円から3億円に引き上げられました。
この規定については、平成22年6月8日付けで施行されています。
法改正に伴い、平成13年に環境省から示されていた「建設廃棄物処理指針」が見直されました。
建設廃棄物の処理にあたっては、この指針に沿った建設廃棄物の適正な処理をお願いします。