県内で広がる生涯学習

インタビュー

県内で広がる生涯学習についてお伝えします。
地域に根ざした取り組みなども生涯学習の一つです。

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自然とアートの中で活動する
横須賀美術館ボランティア

今回は、横須賀美術館の4つのボランティア活動のうち、
ギャラリートークボランティア、小学生美術鑑賞会ボランティアの皆さんにお話を伺いました。

横須賀美術館ボランティア
(左から、祓川(はらいかわ)さん、芹澤さん、菊池さん)

きっかけは『好き』だから

横須賀美術館でボランティアを始めようと思われたきっかけは何ですか。

芹澤:ボランティアの募集を知ったのは市の広報紙でした。美術館がとにかく好きで、2007年に地元に美術館ができると知り、こんなに嬉しいことはないと思いすぐに応募しました。

祓川:用事があり行政センターに行った際、1枚だけ残っていた横須賀美術館ボランティア募集のチラシを見つけたことがきっかけです。元々、美術館巡りが好きだったので、美術館の文字に引き付けられたのだと思います。募集チラシに書かれていた活動頻度などがちょうどよかったこと、障害児のサポートボランティアをしていた経験があったことなどもあり応募しました。

菊池:きっかけは、妻が広報紙で横須賀美術館のボランティア募集を見つけたことです。最初は妻が興味をもっていたのですが、なぜか妻よりも先に僕が応募してしまいました。会社員として定年を迎えるにあたり、これまで仕事のことばかり考えてきたので、退職後は少しでも社会に恩返しができればと、ボランティア活動への参加を考えていたところでした。もともと絵を描くことが好きだったこともあり、あまり深く考えずに美術館のボランティアに応募しました。

自分の気づかなかった自分に気づくことができた

ボランティアを始めたことでよかったことや生活に変化などはありましたか。

祓川:最近の話ですが、小学生を受け入れる時に「対話による鑑賞」をはじめたところ、今まで思っていた自分とは違う自分に気づかされたことがありました。それまでは、子どもたちに「教えなくちゃ」との思いで活動していましたが、実は「対話による鑑賞」はそうではなくて、「子どもたちから教えてもらう」ことがたくさんあるということ、「自分の立ち位置」を変えた方が素直に対話できるということに気づくことができた機会でした。

芹澤:美術館が好きで始めた活動ですが、最初は本当に何も知らなかったんですね。研修で講義を聞いてレポートをまとめたりするんですが、そういった勉強が本当に為になっているし、喜びにもつながっていると思います。些細なことですが、このボランティア活動で身につけた力、説明力などが日常生活で活かせたタイミングがあった時にはよかったなと思います。

菊池:いろいろな方が来館される中で、ギャラリートークでは自分が話したいことだけ話していては通用しません。相手が知りたいことに、どう自分の中の引き出しから出していって興味をもってもらえるか、そういうことが大事だと気付きました。小学生美術鑑賞会でも、こちらが教えてあげるのではなく、新しい視点を教えてもらうこともありします。同じ絵を見ているはずなのに気づかなかったことを教えてくれたり、世の中には柔軟なものの見方や考え方もあるんだな、と勉強になります。

お客様の反応があることがとても大きな喜びになる

活動を通して感じるやりがいはどんなことでしょうか。

芹澤:好きなことをできていることが一番なんですが、ギャラリートークの時間前にすでにお客様が待っていてくださる時があったりして、そういうことがあると「頑張ろう!」と思いますね。

祓川:企画展ごとに学芸員さんからのレクチャーを受けてから館内で説明するのですが、小学生に私が習ったことを説明した際に「そうなんだ!」「そういうことなのね!」という反応があったり、そういう顔を見られたりした時に「やったー!」と思います。

菊池:お客様から「ありがとう」と言われた時にはやっぱり嬉しいです。「声をかけてもらって嬉しかった」「とても参考になった」と言われるとやりがいを感じます。

知らないことを学んでいく喜び

活動中に苦労されたことはどのようなことでしょうか。

菊池:美術に関して詳しいわけではありません。お客様に正確な情報を提供できるように作品に関する美術の知識を蓄えることです。横須賀美術館には図書室もあるのでそこで勉強したり、ギャラリートークの原稿を書いて学芸員さんに添削していただいたりしています。ただ、こうしなければならないと決められた内容があるわけではないので、ある程度自分の好きに説明できるのも楽しいです。

芹澤:何にもわからなかったので、何から始めればいいかというところからでした。教えていただいたことを覚えるのに必死でした。ギャラリートークでは本当に自分で大丈夫なのか不安がありました。でも自分の好きなことでもありますし、お客様に反応をいただいたりするのが糧になりました。今でも学びが続いている感じです。ここの美術館は1年毎に任期を更新しながら活動を続けられるのでありがたいですね。

祓川:私が担当しているのは小学生美術鑑賞会ボランティアだけなので、苦労というのはほとんど感じておりません。活動日も選べますし、とても活動しやすくていいです。

ギャラリートークボランティア研修会の様子

さまざまな「気づき」を得る体験

活動を通して得た学びはどのようなことでしょうか。

芹澤:お客様の反応を見ながらお話することを学びましたし、自分が好きなことをできる限り続けることが、ボランティアとして活動する上では大事だなと思います。

菊池:会話は、双方向でないとコミュニケーションにはならないということです。年を重ねると頑固になってきますが、自分の頑なな部分を捨てて、もっと素直にコミュニケーションをとることが重要だと知りました。会社員時代に仕事で培ってきた会話の仕方とは違う、新たなコミュニケーションを学んでいます。

祓川:美術館での話ではないのですが、子どもが小学生の時にPTA活動の一環で小澤俊夫さんの「昔話研究」について聴講する機会がありました。その時に突然「あ、そうなんだ!」と、アハ体験のような感覚を初めて体感したことがあって、今回学びについて考えた時にこれが学びだったんだと気づいたんです。ふとした時の偶然の体験が、自分の学びになったんです。自分から何かやりたくて体験するのではなくとも、何か体験することで学びのきっかけができるんですよね。ほんの小さなことでもいいから、体験することが大事だと思います。

体験してみることが何かのきっかけになる

みなさんにとっての生涯学習とは何ですか。

菊池:いくつになっても古くて小さくなった脳のしわを増やすような、「あ!」とか「えー!?」とかの気づきが大事なのかな、と思います。あえて学習しようと思って学習するのは続かないと思いますので、もっと普段の生活の中のちょっとしたことにも、色々な気づきがあることに注目してみるといいのでは。そのためにも、積極的に能動的な活動にチャレンジし体験するといいんじゃないかなと思います。

芹澤:若い時と違って生活のスタイルが変わってきて、外に出にくい時もあるんですけれど、無理をせず、気づいたことはとりあえず調べたり、苦手そうなことでも挑戦してみたり…やってみないとわからないから、ちょっと気になっていることでも情報を得ることが学びのきっかけになったりすると思います。

祓川:体験してみようといわれると、良い体験を想像すると思うんですが、私にとっては悪い体験の方が身につくと思うんです。とにかく体験してみる、結果的に躓いたりしたことの方が逆に自分のためになっていたりすると思います。とにかく体験!

自分の知らない世界をちょっと覗いてみるくらいの気持ちで

ボランティア等、これから何かを始めようとしている人へのエールを一言お願いします。

菊池:あまり難しく考えないこと。「ボランティアはこうしなければならない」と考えると、責任感で動けなくなったり、ハードルが上がったりします。まずは見学だけとか、好きそうなところに飛び込んでみて、違うと思ったらやめればいい。勇気がいるかもしれませんが、電話でもメールでも気楽に飛び込んでみてはどうでしょうか。気張らずに未知の人と活動することは楽しいですよ。

芹澤:ボランティアは人のための活動だと思われているけれど、実は自分のためになるものなんだと思います。自分のハードルを低くするのも大事です。人の失敗を他の人はそんなに気にしないですから、気持ちのハードルは低くいきましょう。

祓川:気になったことの情報を集めてみて、検討してみるだけでもいいと思います。できそうになければやめればいいし、迷っている時間がもったいないです!

3名のボランティアの方々のお話には、共通して「ボランティアを楽しむ」気持ちがあるように感じました。自分の生活スタイルにうまくボランティア活動を落とし込んでいるような、無理のない範囲で好きなことに挑戦することが、結果的に誰かのためになっているという素敵な循環を垣間見ることができたのが、大きな収穫でした。
気負わずに何かを体験してみることで1年後の自分がもっと活動的になっているかもしれません。少し気になる何かの情報を集めてみることで、1か月後の自分の余暇がもっと楽しいものになるかもしれません。
今回のインタビューでは、「ちょっとはじめてみようかな」の気持ちの大切さを実感できました。日常生活を今よりも少し充実させるきっかけとして、皆さんも「ちょっと気になること」を探して体験してみてください。

2024/05/30

プロフィール

横須賀美術館ボランティア

横須賀美術館では4つの事業でボランティアが活動しています。所蔵品展のギャラリートークを行う「ギャラリートークボランティア」、来館する小学生の鑑賞補助を行う「小学生美術鑑賞会ボランティア」、障害児向けワークショップの活動補助を行う「みんなのアトリエボランティア」、海の広場などを活用したイベントの企画・運営を行う「プロジェクトボランティア」があります。また、プロジェクト当日のボランティアもあり、さまざまな形で地域と協力し合いながら活動しています。
URL:https://www.yokosuka-moa.jp/education/volunteer.html

ギャラリートークボランティアの皆さん