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更新日:2024年9月17日
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神奈川県の水資源開発事業をご紹介します
本県における水資源開発は、歴史的に河川表流水(注1)を主体に行われてきました。過去60年にわたり戦災復興、高度経済成長などによる水需要の増大を背景として、大きな水不足を経験しながら、4つのダム(相模ダム・城山ダム・三保ダム・宮ヶ瀬ダム)が建設され、相模湖、津久井湖、丹沢湖、宮ヶ瀬湖といった人造湖が誕生しています。現在、県内の水需要をおおむね賄えるだけの施設が整っているわけですが、これは、4つのダムにより水没した地域の人々の理解と協力がなければできなかったことを忘れてはいけません。そこで、上記4ダムの建設を中心に、本県水資源開発事業をご紹介します。
この事業は、昭和13年に横浜市、川崎市などの京浜地帯の人口の増加や工業の進展に伴う水道用水、工業用水及び電力需要の増大、さらには食糧増産のための相模原における水田開発など、当時の社会的、経済的背景のもとにこれら各用水の供給を目的として計画されたもので、相模川本川に設置する相模ダムをその中核施設としています。また、ダムによって生じた相模湖の水は、相模発電所によってピーク式発電(注2)に利用された後、水道原水として利用されるため、放流された水を安定的に取水する目的で沼本ダム及び沼本調整池が設けられました。
この事業は、わが国最初の河川総合開発事業(河川の上流部にダムを設け、これによって洪水時の流水を貯留し、渇水時に放流することによって、洪水を防止するとともに、渇水時における利水事業の需要に応じようとするもの)であると同時に、県が全国に先駆けて行った広域的な水資源開発事業でもあり、戦中・戦後の混乱の中、物資や労働力の不足など幾多の困難を乗り越えて、総工事費2億3,400万円、労働延べ人員360万人、9年の歳月を費して昭和22年に完成しました(注3)。
この事業による開発水量は、上水道用水89万4,000立方メートル/日(10.34立方メートル/秒)、工業用水道用水18万6,000立方メートル/日(2.15立方メートル/秒)、農業用水として最大36万立方メートル/日(4.16立方メートル/秒)であり、ほかに最大出力3万1,000kwの発電を行っています。
その後、戦後の都市の人口増加と産業の復興による水道用水需要の急増や、相模原畑地かんがい事業をはじめとする農業用水需要の激増に対処するため、県は昭和27年に相模川河水統制第2次増強事業を計画、昭和28年に工事着手し、昭和30年に完成しました。これは道志川上流に道志ダムを築いて調整池(奥相模湖)をつくり、ここから相模川の支川である秋山川を経て相模湖まで導水して相模湖への流入増加を図り、相模・津久井両発電所(注4)の出力増加と水道用水やかんがい用水の増強を目指したものでした(現在、農業用水は、後述の相模川高度利用事業の水源に転用されています。)。
(注1) 地上に降った雨は一部蒸発し、一部は地中に浸透し地下水となり、他は地表面を流れて河川に流れ込む。この河川水のことを地下水と区別して表流水という。また、河川の流水のうち、河床の表面を流れるものを地下の流床を流れるもの(伏流水)と区別して、表流水という場合もある。
(注2) ピーク式発電とは、常時、均等の発電をすることなく、電力消費の日変化に応じて大量に消費される時間に大量の発電をすることを指す。
(注3) 建設には地元住民、全国各地から動員された労働者や勤労学徒のほか、捕虜として連れてこられた中国人、当時植民地であった朝鮮半島から国の方策によって連れてこられた方々など、延べ三百数十万人が従事した。湖畔にはダム建設の歴史を語り継ぐために湖名碑が建てられ、犠牲となった中国、朝鮮半島出身者を含む労働者たちをしのぶ「相模湖・ダム建設殉職者合同追悼会」が昭和54年から毎年開かれている。
(注4) 相模発電所は、昭和20年2月に使用開始し、相模ダムから取水して発電している。津久井発電所は、昭和18年12月に使用開始し、沼本ダムから取水して発電している(現在は、沼本ダム、城山ダムの両方から取水している)。
【相模川河水統制事業】
相模ダム(重力式コンクリートダム(注5))
昭和22年完成
ダムの位置:相模原市相模湖町与瀬地先
ダムの高さ:58.2m
総貯水量:63,200,000立方メートル
開発水量(注6):1,440,000立方メートル/日
16.65立方メートル/秒
湛水面積(注7):3.26k平方メートル
集水面積(注8):1,016k平方メートル
調査・工事期間:昭和13年から22年
水没戸数:136戸
(完成当時の県の総人口:2,218,120人)
【相模ダム容量配分】
(注5) 重力式ダムとは、堤体自身の重量により水圧などの外力に対抗するよう設計されたダムを指す。比重の大きいコンクリートで築造されるのが通常で最も多い形式である。
(注6) 開発水量とは、ダムにより新たに取水することが可能になった流量を指す。雨などによって流量が多いときにダムに水を貯め(利水容量を使用する。)、流量が少ないときに流す操作を行うことにより、年間を通じて一定の流量が河川に新たに流れることになり、新たな取水が可能になる。
(注7) 湛水面積とは、ダム等により河川の流水が貯留される一定の面積で、貯留される流水の最高の水位における水面が土地に接する線によって囲まれる面積を指す。
(注8) 集水面積とは、河川、湖沼等に降水が流入する地域の全面積を指す。
(注9) 常時満水位とは、非洪水時に貯留する流水の最高水位を指し、この水位以下の容量を用いて用水補給を行う。
(注10) 砂容量とは、ダムの貯水池において上流から流出する土砂の堆積のためにあらかじめ確保される容量を指す。ダムは、洪水調節、水資源開発、発電等の効用を有する反面、河川の機能の一つである土砂流送を妨げ、ダムヘの堆砂をもたらす。このためダム計画においては、利水容量及び洪水調節容量への影響のないようあらかじめ最下部に堆砂容量を確保することになっている。
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