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更新日:2024年12月16日
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令和6年10月22日 藤沢商工会議所6階 多目的ホールで開催された黒岩知事と県民との“対話の広場”(湘南会場)開催結果
黒岩知事との“対話の広場”地域版(湘南会場)
日時 | 令和6年10月22日(火曜日)17時30分から19時00分 |
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会場 | 藤沢商工会議所6階 多目的ホール |
テーマ | DXで変わる暮らしを探る~未来をつくるAI~ |
内容 |
1 知事のあいさつ 2 事例発表 【事例発表者】 山口 高平(やまぐち たかひら)氏 鴻谷 則和(こうたに のりかず)氏 3 意見交換 4 知事によるまとめ |
参加者数 | 118名 |
こんばんは。神奈川県知事の黒岩祐治です。今日は、県民との対話の広場へようこそお越しいただきました。ありがとうございます。これは私が知事になってからずっと続けているんですけれども、今日が92回目。今まで参加された方は14,000人にのぼっています。直接こうやって対話をしていく場です。私は、もともとテレビのキャスターをやっておりましたから、この会場では、キャスター兼知事と二刀流であります。その会場ごとにいろんなテーマを決めていますけれども、今日は「DXで変わる暮らしを探る~未来をつくるAI~」。こういうテーマであります。高校生の皆さんがたくさん参加してくださって、本当にありがたいと思います。皆さんの未来がDXでどうなるのか。AIでどうなるのか。大変関心があることですよね。
我々は、DXを積極的に推進していこうと思っています。今神奈川県の大きな方策として、「県民目線のデジタル行政でやさしい社会の実現」ということを掲げて進めています。今年の年頭には、「み~~んなDX‼」ということを宣言しました。ありとあらゆる分野が全部DXに替わってくる。それを積極的に我々はその先導をしていくような役割を果たそうとしています。今日は、まずは2人の専門の方から講演をいただきます。これを基にして皆さんと対話しながら進めていきます。そのあとのシナリオは全くありません。どんどん意見や質問を投げかけていただいて、進行していきたいと思います。それでは、最後までよろしくお願いします。
司会
それでは続いて、本日のテーマに関連深いお二人に、事例発表をしていただきます。
はじめに、山口高平(やまぐち たかひら)様をご紹介します。山口様は、神奈川大学情報学部システム数理学科の教授でいらっしゃいます。長年にわたり人工知能やデータマイニング等の研究に取り組んでおられ、人工知能学会の会長を務めた経験もお持ちです。本日は、山口様の豊富な経験と知識から、発展が著しい人工知能の最新事情についてお話いただきます。それでは山口様よろしくお願いいたします。
山口 高平氏
皆さんこんばんは。今ご紹介いただきました、神奈川大学情報学部の山口と申します。
私は学生時代から40数年間続けて人工知能の研究開発に従事してきました。AIは100種類以上の研究テーマに分類されますが、時代背景に依存して、AIの主要研究テーマは変化してきました。まずは、そのあたりからご紹介できればと思います。
AIは、1956年アメリカの中西部、ダートマス大学で10人ぐらいの研究者が集まって議論して、人の知的な振る舞いをコンピュータで実現する研究を人工知能、英語でArtificial Intelligence、略してAIと命名しました。それから68年間、様々なAI技術が登場しました。
最初のブームの時(「第1次AIブーム」)は、推論や探索が研究されました。探索というのは、例えば、将棋で次の一手を考えるとき、それをコンピュータで考えさせるにはどうしたらよいかという研究分野です。
1980年から90年代前半の「第2次AIブーム」は、知識工学という研究分野が登場し、専門家が持つ専門知識をコンピュータに移行して、様々な問題を解決する仕組みが研究されました。また、我が国のプロジェクトとして、高速推論マシンという特別なコンピュータが研究開発されました。なお、第1次ブームと第2次ブームの間に「AI冬の時代」がありました。ブームの時に登場したAI技術を社会の実問題に適用しようとしても役に立たないじゃないか、という批判がこの時代にあり、AIブームの後に起こり、「AI冬の時代」が訪れました。
「第3次AIブーム」は、2010年代にディープラーニングという、非常に多くのデータからそのデータセットに内在する規則性を学習するAI技術が登場しました。特に、人間の目で判断する業務は様々なものがありますが、ディープラーニングが登場し、例えば、未来社会に最も影響を与えていく可能性が高いと言われている「自動運転」にディープラーニングが使われています。
この「第3次AIブーム」はまだ続いている状況ですが、2年前に「ChatGPT」という生成AIと呼ばれる新しいAIが登場しました。今まで技術者や専門家しか使えなかったAIが、一般の人が、日本語や英語で直接AIに指示したり質問したりできるようになり、AIの大衆化と言われ、その生成AIが急速に広まっています。この生成AIは、日々賢くなってきて、ほとんどあらゆる産業に生成AIが普及している状況が、「第4次AIブーム」と呼ばれています。生成AIはディープラーニングの発展系ですけれども、「第3次AIブーム」とはまた異なり、あらゆる分野に影響を与えることから「第4次AIブーム」と言われています。
それでは、「DXが仕事のやり方を変える」ということについてですが、様々な分野でAI技術の適応を試みてきた私の経験から言いますと、人は今までやってきた仕事のやり方を変えることを好まない傾向にあります。従来からのやり方でやるのが一番楽ですからね。そこに、AI、データサイエンスをどのように現場に組み入れていくか、それは依然課題になっています。
ではまず、工場における人型ロボットを動かすAIシステムに関する動画をご覧ください。
(動画視聴)
この会社はATMを生産している会社で、今ご覧いただいたように、作業者とロボットが連携して、組み立て作業を行っています。「ロボット・システム・インテグレーション」という新しいビジネスを始められて、安倍元総理がこの工場に見学にも行っておられます。これは色々な工場に必要になるということで、「ロボット・システム・インテグレーション」を広げようとしています。
それから、今度は医療診断のAIをご覧ください。
(動画視聴)
これはNHKの7年ぐらい前の番組で、最後ちょっと煽っていますよね。本当に小さいポリープは、人間にはなかなかそれは見つけられないので、ディープラーニングという技術を使って画像診断技術を開発したところ、お医者さんが80%の認識率に対して、98%を達成しました。大きな大学病院ですと、もう画像診断はAIに任せるべきだと判断されている大学病院もあります。
2年前に生成AIが登場しましたが、「ChatGPT」は、世界レベルでは、2か月で1億人ユーザーに到達しています。高校生の皆さんは、SNSで「Facebook」とか「Instagram」とか「TikTok」などを使っておられるかもしれませんけれども、一番流行っている「TikTok」でさえ、1億人ユーザーを獲得するのに9か月もかかりました。その4分の1以下というものすごいスピードで「ChatGPT」が普及したのです。ChatGPTで使う「GPT-4o」に関しては、書籍数にすると約1,000万冊も読みこんでいる生成AIです。皆さん、今まで書籍何冊くらい読まれましたか。1万冊も読んでいたらすごいなあ、という感じですけれども。「GPT-4o」に質問をすると、その質問に関連する書籍を1,000万冊から選んで、関連した文書を選んで組み上げて、上手く回答していきます。この能力が急速に進歩してきており、最初は文章だけの処理だけでしたけれど、今は、画像や簡単な動画の処理もできて、例えば、我が社はこんなことをやっているけど、どんな新事業が考えられるかなど、企画立案や顧客サービス、広報関連ですと、コンテンツの作成なども支援してくれます。実際、「GPT-4o」を業務に利用した会社の話を聞くと、これで仕事はかなり楽になると言っています。例えば、プログラミングについてです。「GPT-4o」にこういう機能を実行するプログラムを作ってくださいと依頼すると、何百何千行のプログラムを簡単に生成しますので、これは驚くべき話です。
こういうすごい生成AIが登場してきて、多くの人が使い始めていますけれども、ただ欠点もあって、文脈理解を取り違えたり、推論する回数が多くなると途端に間違えたりします。それから事実検索ができないというハルシネーションの欠点があるんですけれども、生成AIを開発する会社OpenAIでは、来年には、この「GPT-4o」を発展させた「GPT-5」を公開すると言っており、「GPT-5」では、こういう種類の問題は解決されていくでしょう。
今、簡単に説明した「GPT-4o」と画像生成AI専用で「DALL-E(ダリ)」というものがあり、これを連携させた実行例をお見せします。
高校生の皆さん、野球をやっておられる人もいるかもしれませんけれども、「ピッチャーからの投球をバットの芯にあてて、ホームランを打った場面を描いてください」と「GPT-4o」に入力します。そうしますと、10数秒でこの絵をすぐに描いてくれます。次に、これはイメージと少し違うので、「ピッチャーの様子を描いてください」と入力すれば、このようなズームアップの画像を10数秒で描くわけです。さらに、このピッチャーは帽子を被っていないということで「帽子を被らせて」と入力すれば、数秒で帽子を被った画像が描かれます。最後に、「球が外野に飛んで、それを呆然と見つめるピッチャーにして」と入力すれば、このようになり、イラストがどんどん修正されていきます。
今、言語生成AIである「GPT-4o」に人が文章を入力して、画像生成AIである「DALL-E(ダリ)」がイラストを描いたのですが、米国ではこのように生成AIを使うイラストレーターが登場してきて、本職のイラストレーターが仕事を奪われ、問題になっています。生成AIの課題として、人とどう連携するか、業務によっては、人の職業を奪ってしまうことが挙げられています。アメリカでは、いくつかの分野ですでに現実の問題になっており、イラストレーター以外に、法律事務所と会計事務所の業務担当者の3割程度は、生成AIの影響を受けていることが報告されています。人の感情を酌み取りながら対応する、そういう能力はまだ生成AIにはないことから、生成AIに業務を奪われた人が、そういう業務に変わるということが報告されています。しかし、人と接触する業務に馴染めない人もいますから、そういう人は辞職せざるを得ないという、そういう厳しい現実が起こり始めています。
このような背景から、人の能力と「GPT-4o」の能力を比較する実験が行われています。心理学、生物学、SAT、法律、ソムリエ試験ではワインに関する知識を問う問題、これらの知識を問う問題ではすべて、人間より「GPT-4o」の」能力が優れているという結果が報告されています。
また、帝国データバンクでは、2か月前に、4,700社程度の中小企業にアンケートを取ったところ、「ChatGPT」を活用中の中小企業は17.3%。あとは「検討中」、「活用予定が全くない」と回答した企業が半数あることが判りました。「ChatGPT」の懸念材料としては、先ほど述べたハルシネーション、それから、機密情報が漏洩しないかという課題。セキュリティが、現状では100%機能しませんので、それが不安であるという懸念です。あと、著作権侵害、プライバシーの問題などがあります。しかしながら、日本は欧米と比較すると、生成AIの活用割合は、半分以下になっていることが問題です。この生成AIの現状の課題は、確かにいろいろあり、米国では、ハリウッドの脚本家組合で、テレビ・映画の脚本が生成AIでつくれるようになったために、仕事が回ってこなくなり、我々の仕事を奪うな、というストライキが去年実際に起こっています。また、ヨーロッパでは、このリスク面を重視して、リスクをタイプ別に分けて対策を考える法律が今年8月に実際に施行されました。日本はどうかというと、岸田総理が去年、5月に「G7サミット」で「広島AIプロセス」という枠組みを提案されて、これを現在国レベルで具体化しようという状況になっています。これで私の発表を終了させていただきます。
司会
山口様ありがとうございました。
続いて、鴻谷則和(こうたに のりかず)様をご紹介します。鴻谷様は株式会社日立システムズにご勤務されています。これまで医療機関向けシステム開発などに携わって来られ、現在は、未病・健康支援関連サービスのプロジェクトマネージャーとして活躍されています。本日は、県の未病ブランドの認定商品である健康支援サービス「MIRAMED(ミラメド)」を例に、最新技術がどのように私たちの暮らしに関わっているのかについてお話いただきます。それでは鴻谷様よろしくお願いいたします。
鴻谷 則和氏
皆さまこんばんは。鴻谷と申します。では、簡単に自己紹介をいたします。私は「日立プラント建設」というところに入社をしました。今まで辞表を出したことはないですが、社名が5回変わってしまいました。2009年に、日立情報システムズへの事業継承により自分も転籍となりました。それから、2021年には、今日ご説明差し上げます「MIRAMED」を世の中に出しました。そして去年、神奈川県の「ME-BYO BRAND」に認定いただいたというところでございます。日立システムズは本社が大崎にございまして、私は藤沢市民でございます。会場まで歩いてくる方は初めてだと事務局の方から言われております(笑)。
日立システムズは、システム構築から運用保守までワンストップで提供する会社です。システム関係をすべてできるというところに強みがあります。先ほど山口先生から「第4次AIブーム」、冬の時代がなくて第3次から第4次に移行した、というお話がありましたけれども、2018年からこれだけのいろいろなモデルができています。こんなにあるんだということを皆さんに認識していただければと思います。この中で、2016年には、東京大学COI(Center of Innovation)「自分で守る健康社会」拠点で、「カラダ予想図MIRAMEDプロジェクト」が発足しました。そこで、来月の「ME-BYOサミット神奈川」で講演される、岸暁子先生が研究用の「MIRAMED」を開発されました。
一方で、皆さんの健康ステージがどうなっているか。左側が健康。右側にいくほど病気となって重症化していく流れとなっています。
「MIRAMED」というのは、この境界領域で、不健康な生活習慣をおくって病気になるまでの間の方に対するサービスになります。日立システムズはこの部分を全般的にサービス提供しております。あとは「SaMD(Software as a MedicalDevice )」「DTx(デジタルセラピューティクス)」、聞きなれない言葉だと思いますけれども、「デジタル治療薬」というものがありまして、お医者様が処方する治療薬でございます。このあたりの開発支援とかも実施させていただいています。
では、「MIRAMED」とはどういうものかについてです。特定保健指導には指導者側と対象者側がおりまして、対象者はアプリを使っていただき、指導者側はアプリの情報をほぼリアルタイムで見られます。「ちゃんと運動していますか。」に対して「運動しています。」と嘘をつくと分かってしまうということになっています。
また、DXの推進としては、未来の罹患リスクを確認できたり、システムからアドバイスも出ます。あとは、対面で実施していた面談がオンラインに変わって、対面の時には日々の状況を説明しなければならなかったのですが、それが管理者側で事前に分かってしまうというところです。それから、指導者側に関しても、紙面の廃止、GX(グリーントランスフォーメーション)にも貢献しているというところです。このあたりは、やはりDXは生産性向上に役立っていくというところがメインになっております。
さらに、このシステムは「AWS」というクラウド上で動いています。これはヘルスケアの領域のものですが、やはり要配慮個人情報を扱いますので、「3省2ガイドライン」といった安全管理対策をきちんと実施していかなければならないこととなっています。
「特定健康診査」と「特定保健指導」についてですが、2008年に、高齢者の医療の確保に関する法律で、40~74歳の方のメタボリックシンドロームを対象に制定されているものです。特定健診の実施率について、少し古いデータですが、まだ56%程度。それから、特定保健指導に関しては、この中でメタボリックシンドロームと判定された方が対象になりますが24.6%となっています。このあたりは今28%になっていますが、実は神奈川県が最下位となっています。ですので、この割合を何とか上げていこうと県で最近取り組んでいる状況です。やはり自分事としていただかないと行動に移りませんので、そういったところを支援するシステムとなっています。
では、実際の内容です。左側に皆さんが健康診断を受けたときの健診結果が表示されています。右側には、肝臓や脳とかの表示があり、黄色で表示されると「少しリスクがある」、オレンジで表示されると「リスクが高い」という意味です。あとは、顔の変化についても搭載しています。これは後程ご説明いたします。この日々の行動をどうやってサポートしていくかというところですけども、毎朝3つのチャレンジというものがあります。このチャレンジは、自分が今日は飲酒しないと決めているのであれば、「お酒を飲まない」というチャレンジにすることもできます。そして、実施した内容をその日の夜に振り返りで登録していくと、毎日アドバイスが表示されるようになっています。
また、顔変化についてですが、「MIRAMED-Face」という名前で、自分の健診結果から将来の顔の変化を予測できます。こちらは「メタボリスク低」と「メタボリスク高」の場合です。あとは、飲酒、喫煙、ストレスの状況でどう変化していくか、そういった遊び心があるものも入れております。
日立システムズの目指すべきヘルスケアの将来についてですが、様々な技術が今後出来ていかないと、こちらの図のような将来像は実現していかないと思っています。医療の世界では、説明可能AIというものが求められていますが、なかなかここまでいくには難しいという状況になっています。
また、今後の進化としてAIで「SLM(Small Language Model)」というものがあり、「ChatGPT-4」は「LLM(Large Language Model)」という大規模言語が使われています。「SLM」はスモールということで、特化して学習させていくことができます。
次に、「PHR(personal Health Record)基盤」についてです。皆様の若いうちからの情報をすべて貯めていって、将来的にお医者様にかかったときにお見せするということができます。東京大学の先生などは、毎朝鏡の前に立ったら健康チェックが終わる、という世界を目指すと言っていらっしゃいます。こういったDXを通じたウェルビィーングを目指していくというのが、日立システムズが目指しているところであります。
最後に、今日は若い方がいらっしゃるということで、将来を担う皆さんにお伝えしたいことです。いろいろなことに興味持っていただいて、雑学をたくさん吸収してもらえればと思います。自分の好きなことが必ずその中で見つかってくると思いますし、それらを少しずつ実践していきますと、AI自身が嘘をついているかもしれない、といった真実を見極める力、また、物事を多角的に見る力というのが養われていくと思います。企業の立場としては、相手の立場に立って、自ら課題を抽出して解決できる人材を求めていきたいと思いますので、皆さんもそういった人材になっていただければと思います。以上になります。
司会
それでは、ここからは、黒岩知事に進行をお任せします。知事、よろしくお願いいたします。
知事
はい、よろしくお願いいたします。「ChatGPT」という言葉を最近よく聞くようになりましたが、これから先どんな世の中になっていくのか。不安を皆さんは感じておられるかもしれません。どんどん聞いていただいて構いません。その前に、後半に出てきた「ME-BYO BRAND」について少しだけご説明しておきます。これは神奈川県が推奨している健康の考え方です。真っ白な健康があって真っ赤な病気がある。健康か病気か、ではなくて、健康と病気の間はグラデーションになっており、連続的でつながっていますね。このグラデーションのところを「未病」と言います。病気になったら治すのではなくて、未病の部分のどの段階にいても健康の部分に持ってこようとすることが大事になります。そのためには、食・運動・社会参加が大切になります。そして今、自分がこのグラデーションの中のどこにいるのかということが、AIやDXの力でわかるようになってきています。今はこの辺りにいますよ、この生活を続けると、先ほどの「MIRAMED-Face」のように、未来が見える。未来が見えれば、今の生活を変えなければいけないな、となり、一人ひとりの行動変容につなげるという流れです。そして、グラデーションにしたところから様々なテクノロジーが入ってくる、そのテクノロジーを神奈川県では「ME-BYO BRAND」として認定しています。「MIRAMED」はそこで認定された新しいサービスになります。
そういったことを踏まえて、お二人のお話は、AI・DXと言いながらもかなり違った世界観でありましたけれども、どちらでも結構ですので、皆さんが思ったことをどんどん教えていただきたいと思います。質問攻めでも良いですし、意見でも良いですし、私はこんなことやっています、といった発表でも構いません。このテーマに関してご発言いただきたいと思います。では、ここからはシナリオはございません。はい、よろしくお願いします。
参加者(1)
藤沢翔陵高校3年です。私は、善行地区を自動運転バスの実証実験の対象としてもらいたいと考えています。私は善行公民館で夏祭りボランティアをしました。その活動の中で、盛んな街に欠かせない路線バスについて考えてきました。善行地区は、神奈川中央交通の他に乗り合いバスが1台走っています。他の地区より採算がとれており、また職員の方のお話より、人件費が高いことから自動運転バスの導入を希望しているとお聞きしました。高齢者が多く坂が多い善行地区では、地域を循環する公共交通機関が欠かせません。この善行地区を自動運転バスの実証実験対象エリアとして検討していただくことは可能でしょうか。また、今後の神奈川県内を走る路線バスの在り方についてお伺いしたいです。
知事
はい、ありがとうございます。今、人手不足がどの業界でもあるんですよね。バスそのものはあるんだけれども、運転手さんがいないので、バスの運行をどんどん減らしている現実もあるわけですね。ですので、それを補うために自動運転のバスが非常に有効になります。まだ実証実験を重ねている最中です。善行でやろうと思ったらできるわけです。藤沢で以前行ったのはご存じですか。江の島まで行くバスに私も乗りました。オリンピック・パラリンピックを前にして、さすがに無観客でやるとは思いませんでしたので、皆さんをどんどん運ぼうと思いバスの実証実験を行いました。ところが、実証実験ばかりやっているんですよね。いつになったらこれ実際に動きますかね。山口先生、いかがでしょうか。
山口 高平氏
自動運転の実用化については、アメリカが世界より2歩リードしていて、アメリカのサンフランシスコやロサンゼルスでは、自動運転タクシーが数百台ずつも運行されています。何が難しいかと言えば、やはり安全性です。100%安全でないと日本ではなかなか実用化できません。例えば、自動運転は直射日光に弱いです。それで直射日光で歩行者を認識出来ずに轢いてしまうなど、アメリカでは、実際そういう事故が起こっています。そういう問題をすべて解決しないと実用化は出来ません。我が国は非常にその安全性を重視してやっていますので、2030年頃にならないと実用化できないと個人的には感じています。
知事
ありがとうございます。もともと日本はもっと早かったんですよ。私が知事になってすぐに高速道路の自動運転走行の実証実験を行いました。その時、ドイツのベンツの会社に行き、会長に話をしたらびっくりしていました。日本はもうそんなに進んでいるんですか、と言われたにもかかわらず、いつの間にか追い抜かれているんですよね。これにはやはり100%を求める国民性が影響しているのでしょうか。
山口 高平氏
私は、国民性が大きな影響していると思っています。アメリカの場合、自動運転車が事故をして人が亡くなったとしても、問題視はしますが、技術開発をストップすることはありません。新しい技術を開発するためには、やむを得ないという言葉は不適切だと感じますが、そういう側面があってその課題を克服することを目指して新技術をさらに進めるという感じがあります。一方、日本でそれが起こると新技術の開発はほとんどストップしてしまいますので、その点に差があるように感じます。我が国では、確か筑波大学の周辺で自動運転の実証実験が進んでいますが、実証実験としては、歩行者の多くいる場所での実験も必要です。でも、大きな事故が起こったらどうするんだ、ということでそれは実施できません。アメリカでは、歩行者が多くいるニューヨークのマンハッタンで実験をしたら、歩行者に取り囲まれて自動運転車が動けないということがありましたが、自動運転車の性能を改善して、現在、サンフランシスコやロサンゼルスにおいて、自動運転タクシーが登場しているわけです。
そういう経緯がありますので、新技術で人の命がかかるものというのは、慎重になりながらも、ある程度歩行者がいるところを実験地区にして進めていくなど、人と関わるような場所で実験するという考え方も必要かなと思います。
知事
初めて自動運転車に乗ったときに、「交通事故がなくなるような社会を作りたい。」とある社長が言われていて驚きました。今はどういう状況かと言えば、人間が運転していますよね。人間が運転しているというのは、その人がどのような人かはわかりませんよね。寝ているかもしれない、酔っ払っているかもしれない、ものすごい高齢者の方かもしれない。実際に高速道路を逆走したりもしています。これが全部AIで自動運転になったらこのようなことがなくなる。だから、その社長から交通事故ゼロを目指すという話を聞いて驚いた記憶があります。
他にいかがですか。
参加者(2)
主に黒岩知事にご質問になるかと思います。AIでやって欲しいこととしまして、「DV(ドメスティックバイオレンス)」と「ハラスメント」。こちらをAIでわかるようにして欲しいなと思っております。
まず、DVって何なのか、どういう行為がDVなのか、多分正確には皆さんわからないんです。家族を作ってこれから毎日過ごしていくという中で、どの行為がDVかわからない中で過ごしていくのは毎日不安だと思います。そのDVを相談するために、男女共同参画センターの方で相談窓口があると思いますが、実は女性の方が非常に相談窓口が多くて、男性の方は非常に少ない状況になっています。相談するのもやはり人なので、その感情を伴って相談を受けていただいていると思うんですけども、そもそもDVというのをカテゴライズして、その強弱をつけることで、ある程度DVの深刻度もわかっていくのではないかと思っているので、これらを達成することで、男女共同参画センターの予算部分の見直しもできるのではないか、が1点目です。
もう1つは、ハラスメントです。これも各企業の管理職の方々、皆さんどの行為がハラスメントに当たるのか、正確にわからない中で働いているような状況です。特にセクハラというのも、男女ともにあると思うんですけども、特に男性の管理職の方々、どの行為がハラスメントにあたるのかまではわからない中で、日々調整しながら過ごしていると思いますが、この行為がハラスメントに当たるとかそういう指標があることで、管理職の方々も非常に働きやすくなるんじゃないかなと思っております。
これを、神奈川県でやっていただくということで、神奈川県では働きやすいまち、さらに、家族で過ごしやすいまち、こういったものに繋がっていくのではないかと思いまして、ご提案申し上げます。
知事
はい、ありがとうございます。例えばテクノロジーを進めていくといろんなものが見える化してくるといった中で、DVとかハラスメントがいろいろな形で見える化することはあり得ると私は思います。その中で、例えば、先ほどの未病の話で、未病ブランドの第1号に選ばれたテクノロジーがあります。「MIMOSYS(ミモシス)」といって声の分析ができます。これは東大の光吉先生が開発しました。声というのはつくることができますよね。本当は心が落ちこんでいるんだけれども、元気にしゃべる、みたいな。ところが、脳の波形を分析すると、脳と直結している波形が見える。例えば、皆さん首の後ろをキュッと絞めたら、キャーというでしょ。あの声は本当の声で、作ったわけじゃない。その声を見つけ出し、データを全部取って分析していく。そうすると、「MIMOSYS」というのは、今スマートフォンのアプリケーションであり、未病指標を東京大学とWHOで開発しました。声だけで見える化、数値化がされる。こういうデータをどんどん取っていると、例えば、虐待されているお子さんの声を集めて分析すると、一見虐待されているとわからない子でも、その声でわかってくるかもしれない。DV被害を受けている人は、「被害を受けていますか。」と聞かれれば、「受けていません。」と言う人がたくさんいるんだけども、データをたくさん集めて分析すれば、声で見えてくるかもしれない。こういったアプローチを今神奈川県ではやっております。
ハラスメントに関しても、全部がテクノロジーで済む話ではないので、テクノロジー的なアプローチは我々も追求していきたいと思っておりますが、やはり、これがハラスメントにあたるんだ、という部分については、我々も研修会等で議論しています。専門家の方に話していただき、これはセクシャルハラスメントにあたります、こういうことはパワハラになります、ということをみんなで理解し合う。テクノロジーのアプローチと、こういったアプローチ、様々なアプローチをしていこうと思っています。
参加者(3)
私たちの暮らしには、県議会、市議会はじめ、様々な議論があると思うのですが、その中で、議題の提案から実装までをAIにすべて任せる、人間が一切手を加えない、こういったことが将来的にはあると思うのですが、知事としては、すべての議論とは言いませんが一部の議論をAIに任せるということに賛成か反対か、お考えがあればお願いいたします。
知事
あなたはそういう社会は良いと思いますか。AIが議論して人間は黙っていて、AIが決めたことに従う社会をあなたは望みますか。
参加者(3)
個人的には否定的ですが、山口氏のお話の中には、企業の提案などもAIで実際に行ったということがあったので、将来的にはそのような審議があるのではないかと思いました。私としては反対ですが、将来的にはあり得ることなので、今の知事のお考えをお聞きしたいなと思いました。
知事
私はそういう社会は嫌ですね。AIが議論をして、人間がそれに従うということになりますので。この議論というのは、人間の頭脳を超えるか、そういう時代が本当に来るのか、本当に人間の頭脳を全部超えたら、あなたが言っているような社会になるかもしれないね。全部AIが決めて、人間はそれに従う。AIの方が頭が良い。そういう社会は本当に来るのでしょうか。山口先生いかがですか。
山口 高平氏
今月初めに、SoftBankの孫正義会長がAIに関する講演をされ、今、「ASI(Artificial Super Intelligence)」という言葉が話題になっています。人のような知能ではなく、人を超える超知能を実現していこうという話しです。今日ご紹介した「GPT-4o」以外に、「o1」という高度推論エンジンが公開されました。「o1」では、何十回も推論を実行した結果、こういう過程からこの問題はこういう結論になると説明できます。人間が途中であきらめてしまうような長い推論を簡単に実行します。それがもう開発されているんですね。「o1」というハイレベルの推論システムと、「GPT-4o」が連携して、「GPT-5」という新しい生成AIが来年前半には登場すると予想されています。「GPT-5」では、様々な動画処理ができるので、人の仕事を奪う割合がさらに増えるだろうと予想されています。ただ、AIであれ、ASIであれ、人の道具、ツールにしか過ぎないことを忘れてはなりません。賢さについては色々な賢さがありますが、知識量については、すでに言いましたように、「GPT-4o」は書籍数1,000万冊を読み込んでいますので、もう人間は勝てないのです。1,000万冊も読みこんでいる人などいませんものね。そして、関連する文書を組み上げて回答します。書籍に書かれている知識から回答するというレベルでは、もう我々はAIに勝てないのです。でも、その話からAIが人を操るという話にはなりません。別次元の話です。あくまでも、AIであっても来年出てくるASIであっても、人のツールにしかすぎないことを思い出して下さい。人とAIの共存という観点から、人間側に立って、色々な議論をしていくべきと感じています。
知事
AIはやはり誰かが使う道具ですよね。良い人が使ってくればいいけど、悪い人が使ったら、これ怖いですよね。
山口 高平氏
悪い人がAIを使う場合も今想定されています。そして、それを打ち破るAIの研究も始まっています。ディフェンスサイドのAIが研究され、AI対AIの対決の時代がもう現実になろうとしています。
参加者(4)
二宮町の副町長の渡邊です。先ほどの議論へのコメントですが、そもそもAIとかコンピューターが出している答えが、正解を出すという話ではないはずなんですね。私たちが色々な問題を考えたときに、結局、大変なのは、正解がなくて色々なことを考えて、その結果を振り返って解決策を見いだすことを私たちはやっていると思います。先ほどの「ChatGPT」の何が良いかというと、上手く質問をして、「ChatGPT」が書いてきたものに対して、質問を繰り返していき解決策を見つけていく。これは人間が介在してくるからこそだと思うんですね。ですので、一概にAIだけで正解を導いてそれに従うというのはちょっとないのではないかなというのが私の感想です。
知事
はい、ありがとうございます。これに対して、山口先生いかがですか。
山口 高平氏
今ご指摘あったように、「ChatGPT」に与える質問とか指示を専門用語で「プロンプト」と言います。「プロンプト」の善し悪しで「ChatGPT」からの回答が全く変わってきますので、今、先進的なIT企業は「プロンプトエンジニア」という新しい職種の人材を募集しています。AIにピンポイントで質問を与えるのは、素人ではできないということです。色々な指示の仕方や質問の仕方があって、こういう場面ではこういう質問をすると良い答えが返ってくる。それをたくさん経験した人が必要だと考えられるようになっています。アメリカでは去年から、日本でも今年から、先進的なIT企業ではプロンプトエンジニアの募集を始めました。どれだけその人たちが本当に素晴らしいプロンプトを与えているかは知りませんが、そういう時代に今年から日本も変わろうとしている状況です。
知事
ありがとうございます。他いかがでしょうか。
参加者(5)
神奈川県立七里ガ浜高校の1年です。2つほど質問があります。1つ目は、アプリを用いて健康管理をすると先ほどおっしゃっていましたが、それをより生活に浸透させるために、どのようなことが大切だと考えられますか。2つ目は、アメリカではストライキが起こったと先ほどお話がありましたが、日本でストライキが起こるのは珍しい光景ではありますが、日本で起こらないためにどのようなことが大切だと考えられますか。
知事
アプリを使った健康管理。これについて鴻谷さんお答えいただけますか。
鴻谷 則和氏
やはり自動で色々なデータが取れないと、面倒くさくて入力しないですよね。ということだと、今の状態だとデバイスの進化が必要になってくると思っています。近年こういったヘルスケアアプリが進展してきたというのは、やはりアップルウォッチとかのデバイスの進化があると考えています。ですので、そういった自動的にデータをとるというところ。PHR(Personal Health Record)という考え方は、2000年より前からずっとあって、20年経っても浸透してきませんでした。それが最近のデバイス進化によって浸透していったというところがあります。あとは、使う方のインセンティブ。どういったところに魅力を感じて使われるか。いろいろな病院に行ったときに、問診を毎回書くのも面倒くさいですよね。また、35歳以上の方は健康診断とかで問診を毎回書いており、去年何を書いたか忘れてしまうと思います。そういったところから、データ蓄積というところに価値を見出していただければというところが一番重要だと思います。
知事
アプリを使った健康管理は、我々も積極的に進めています。できるだけシンプルに見える化するのが一番良いですよね。そしてやっぱりこういったものを使ったことによってこんなに元気になりましたという事例が広がっていくといいなと思っています。2年ごとに実施している「未病サミット」が今度の11月に行われます。今はすごいテクノロジーがどんどん出てきていて、指輪をはめているだけで体の中のホルモンの状態がわかるというものがあります。あとは、脳の写真を撮るだけで認知症の予測ができるなど、色々な技術が出てきています。これらは、ある種自然に広がっていく流れになってくるのではないかなと楽観的にみているところはあります。
それからもう1つ、アメリカで脚本家たちがストライキをしたようなことが、日本でも起こらないためには何が必要でしょうか、という質問でしたが、山口先生いかがでしょうか。
山口 高平氏
私は、日本でもストライキやったらいいと思いますけどね。結局、その現場の人たちがどう感じているかという声を届けるという話です。今は現場の人がAIとやや対立気味で、我々の仕事が奪われるのではないかと心配されています。
ところが、例えば、アメリカの就職活動では、今生成AIを使えるか使えないかで、入社できたりできなかったりする現実がすでに来ています。AIを使えない人は(ある会社には)入社できない時代がきたのです。それが3割から4割ぐらい起こっていると言われています。高校生の皆さんが大学に進学されて、社会に出るときは、我が国でも同様になっていると思います。昔、Excelが出てきたときに、電卓しかたたけない人たちが一掃されたのと同じような状況です。生成AIを使えばそんなことは簡単にできるのに、それを知らないで、いろいろ文句を言うのはおかしいと指摘されてしまうのです。でも、人の感情面をケアするような仕事は残るので、そのような業務への移行が起こると思います。
また、人とAIがどのようにすれば上手く連携できるか、協働できるかを国民レベルで考えていかないといけないと思います。残念ながら、昔と比べて、我が国の経済力は落ちてきています。欧米の話をしましたが、中国も生成AIを進めています。そして、生産性を向上させています。そういうことから、生成AIを道具として駆使してGDPを上げる。そこまで考えないといけない時代が到来しようとしていますので、高校生の時から生成AIをどんどん使い、そういう人が社会に出て活躍されていくことを個人的には期待しています。
知事
この中で「ChatGPT」を使っている人はいますか。
(手が挙がる)
どのように使っていますか。
参加者(6)
「ChatGPT」を使うときは、学校の課題とかで自分の意見出すときに、「ChatGPT」に案を何個か出してくださいというと、一気に出してくれるので、その中で、課題に沿った案をさらに自分で考えて使ったりします。
知事
学校の宿題を「ChatGPT」でやってしまったりとかあるんですか。
参加者(6)
それはないです。「ChatGPT」でもできるというのは聞いたことはあるんですけど、「ChatGPT」で全部やるのは自分のためにならないし、今AIを使いこなす人が重要というお話があったと思うのですが、全部にAIを使っていたら、AIを使いこなしているというか、使われているようになってしまうと思うので、AIは意見を出してもらうときなどに使って、芯となる部分は自分で考えてやるようにしています。
知事
他にこんなふうに使っています、と紹介したい人はいますか。
参加者(7)
私の使い方として、自分で文章を書くのですが、例えば、法的リスクを考えて添削してくださいというと、きちんと法律に則った形で、駄目なところは削除してくれるので、ある意味企業の法務部門がやってくれるようなところは少なくとも置き換えることができるのではないかと思います。
知事
はい、ありがとうございます。今、手を挙げてくださいましたね。どんなふうに使っているんですか。
参加者(8)
私は、街頭演説の素案を作ったりもしていますが、ただそのまま使うといかにも「ChatGPT」がしゃべっているような内容になってしまうので、あくまで下書きで、そこに自分の感性を乗せていくような使い方をしています。あともう1つは、資格の勉強をするときに、テキストデータを読み込んで、それをもとに3択問題を作ってもらったりもしています。そのままデータを使うと嘘も本当も入ってきてしまうので、正しいテキストデータをもとに問題集を作ってちょうだい、という使い方もしております。
知事
ありがとうございます。1度、県議会でこんなことがありました。質問者が1つだけ「ChatGPT」で質問を作ってきて、あえて、「ChatGPT」で質問を作りましたと言い質問をする。そして、それに対する答えも「ChatGPT」で作りました。全部を「ChatGPT」でやってしまったら議会もいらなくなってしまいますが、そのような使い方もできました。でも、質問も答えも変ではなかったです。このような中で、今議論をしていると、人間って何なんだろうか、人間って何をすればいいのだろうか、そんな疑問にもなってきます。さあ、議論を深めていきましょうか。
参加者(9)
藤嶺学園藤沢高等学校の新聞部です。神奈川県はDXがつないで便利な社会になっていると、いろいろ調べてわかったり自身でも感じたりしているのですが、そのDXによって、経済的な費用はいくらぐらい抑えられているのですか。
知事
なかなか難しい質問ですね。今はどんどん進化しているところです。例えば、道路の白線が消えているということがよく皆さんからの苦情であります。これを何とかDXの力で改善しようということで、県内全部の道路をカメラ付きの車で走って、そのデータを全部取り、そこの白線がどういう状況なっているかというのを、全部データ化します。そして、消えているところ、消えかけているところの優先順位をつけて、どんどん白線を塗り直していきます。皆さんからのクレームが来る前に塗っていく、という使い方をしています。しかし、この話で、経済的効果と言われたときに、答えられないです。
参加者(9)
DXによっては、例えば、人員などがかからなくなってきたときに、経費抑制分はどのぐらい行政サービスの事業などに回せるのか、という質問です。
知事
DXはいろいろな制約ありますから、それによって例えば人をたくさん辞めさせるわけでもないですので、まだ経済的にいくらというところまでいっていないのが正直なところです。将来的に何十年単位で見ていったときには、人は減っていきますね。公務員の数だってもっと減るだろうと言われている。でも、行政サービスは減らないわけですよね。それが、DXで補っていくとなったときにどうなってくるのかというのは10年ぐらいの単位で見ていかないといけないので、今の段階で経費削減できましたかと言われてもまだ答えられないというのが正直なところですね。でも、そういう視点は大事です。そうでないとこの国は持たないですからね。
参加者(10)
神奈川県在住の者です。AIロボットを開発しているスタートアップをやっています。DXにおいてロボットとAIが重要になってくると感じています。ロボットに関しては神奈川県に特区がありますが、神奈川県がどういう立ち位置で重要だとお考えになって特区を打ち出しているか、また、国際的に見ても、神奈川県という立ち位置がどういうふうに重要なのか、ビジョンがあればお聞きしたいです。
知事
「さがみロボット産業特区」というのを今から10数年前獲得しました。というのは、今は完成している圏央道がもうすぐできるというときに、割と楽観論が増えていました。「あそこの高速道路が繋がったら地元はすごく潤うぞ」という期待感がすごかったんです。でも、僕はそれにちょっと違和感をもって、逆かもしれないと思いました。高速道路がつながったらここからどんどん人が出ていってしまうかもしれないし、通過されるだけかもしれないし、そこに何か集積する、降りたくなる、集まってくる何かがないとだめだという危機感を持っていました。相模のエリアというのは、どういうところなのかと見たら、技術を持った中小企業がたくさん集まり、大体が自動車産業に繋がっている産業でした。こういったものを自動車産業だけではなくて、うまく何か次なる新たな産業のために方針を示せないかと思ったときに浮かんだのがロボットであり、それで、ここをロボット産業の特区にしようと思いました。特区にするとはどういうことかというと、ロボットを開発しようと思うと色々な実証実験が必要になります。ところが、実証実験をやろうと思うと色々な規制に引っかかってしまう。例えば、今でもドローンがどんどん飛んでいますよね。ドローンも相模エリアで開発していました。ドローンを開発しようと思うと電波を出しますが、その電波が電波法違反になったりする。ただ、特区だからそこのエリアは規制を緩和するようなエリアにしよう、ということで、いろいろな経緯があり「さがみロボット産業特区」を勝ち取りました。
ではどんな規制を緩和すればいいかとなったときに、規制緩和の項目が12個出てきました。例えば、自動運転の実証実験をやろうと思ったら道路交通法があります。この規制を緩和しなければ実験すらできません。そのため、12項目の規制緩和を国に要望したら、第1回目の国の結論は、全部バツだったんですよ。「冗談じゃない。こういうのを名ばかり特区と言うんだ。本当の特区なら規制緩和しなきゃダメじゃないか。」と言ったら、次の交渉で全部マルになりました(笑)。それで出来たのが「さがみロボット産業特区」で、ずっと新しいロボットを作ってきました。
そのような中で、今度はリニアの駅ができます。ここでもまた楽観論が挙がっているんです。「リニアの駅が出来たらお客さんがどんどん来るぞ。」と。しかし、本当にそうか。相模原の人は下りるかもしれないけど、東京からわざわざ神奈川駅に降りるか。だから、降りたくなる駅にしなきゃだめだと。こういったことで、「ロボット産業特区」があるが、ロボットの溢れる街にするなど、さらにバージョンアップしようとなりました。
それから、あそこはJAXAがあります。宇宙ともつながっているから、「宇宙」「ロボット」「産業」のイメージで、そこに来ると何かいろいろな新しいことがある、エンターテイメントも含めてそういうイメージしていこうというのが、我々の考えているビジョンです。宇宙産業もあそこにいろいろとあるんですね。日本の強みというのは、小さい衛星。おもちゃみたいなやつ。衛星はでかいやつだと思うじゃないですか。オブジェみたいなやつです。ああいった小さな人工衛星みたいなものが日本の得意技です。そういうのをもっと集積をして、そして相模エリアをそういう意味での世界の宇宙産業、日本ならではの尖がっているようなエリアにしていきたいというのが、私たちが考えているものです。
参加者(11)
神奈川県立七里ガ浜高等学校に通っている者です。私は最近、教員不足という言葉を耳にしています。実際私が通っていた中学校にも、1年生の時に教員不足をテーマにしてNHKが取材に来たのですが、いまだに教員不足が深刻化しているということを耳にします。それに対して、例えばAI教師やAIによる映像資料など、今神奈川県がどういう対策を考えているのかお聞きしたいです。
知事
はい、ありがとうございます。AI教師、面白いですね。人材不足というのはどの業界でもそうなんです。教師の世界でもまさにそうです。最近は、教師になりたがらない人が多い、これも大きな問題ですね。先生という仕事が大変だというイメージがすごく強い。今、モンスターペアレンツのような、怖いお母さんお父さんがいて、その対応をするという大変なことがあります。先生も1人の人間だから、いろいろと言われたらその対応でもう心が折れてしまいます。そんなことを聞いていれば、先生になりたくないと思っている人もいるかもしれない、ということで、志望数そのものがだんだん減ってきています。
そのような中で、例えば、教師がやる仕事と教師ではなくともできる仕事がありますよね。ですので、教師の資格を持っていなくてもできる仕事を誰かにサポートしてもらうということです。学校では今、皆さんの悩み事を聞くカウンセラーのような、教師の仕事をサポートする方がいる学校もあります。全部を先生に相談するのではなく、悩みを聞いてあげるのはサポーターの人。例えば、地域の元先生や引退された人に、自主的にサポーターに入っていただく。このようなことをして、先生の働き方改革をする。先生は、子供たちと向き合いたいという思いで先生になっている。教師とはそういう仕事だと思っています。しかし、子供たちとなかなか向き合えないいろいろな雑務があったりしますので、その部分を他のかたにやっていただこう、という流れを考えています。AIに教師をやってもらおうというところまではまだ至っていませんが、一部はそんなこともできるかもしれないですね。
ちょうど先生がいらっしゃいますね。先生いかがですか。
参加者(12)
教員の仕事である、生徒の声を聞くことや評価指導と言ったものをAIができるかというと、非常に難しいと思います。ですので、うちの学校では、iPadを生徒全員に持たせ、今まではプリントをして配布していたものをデジタルで配布するなどをしております。変えられるものはなるべくAIやコンピューターに変えていくということだと思いますが、やはり学校は、人と人との出会いがあり、卒業式での別れもあります。ですので、そういったところはやはり人間の仕事で、教員である以上そういった喜びをもち、是非今の高校生達の中からも教員になってくる方がいると教員として嬉しいです。
知事
はい、ありがとうございました。ほかにどうぞ。
参加者(13)
茅ヶ崎市在住の者です。今、AIの未来や、それに伴う希望の話題に水を差すようで申し訳ないのですが、生成技術によって提出物を作ったりすることに対し、教師などがそれを検出するAIを使ったり、イタリアなどでは、EUに先駆けて規制を、昨年から始めていたりと逆にアンチAIの時代もくるはずだと思います。実際に、先ほどのハリウッドの例ではないですが、ストライキを起こすほど失職の危機に陥っているとのことなので、これも非現実的ではないと思います。そこで、知事と、ゲストのお二人に、どのようなAIへの規制が考えられるか、お尋ねしたいです。
知事
山口先生いかがでしょうか。
山口高平氏
私はAI研究者なので、規制というのはほとんど考えない立場です。先ほど教師の方からのお話がありましたが、神奈川県の横須賀や東京のいくつかの小学校で、教師とAIロボットが連携する事業を5~6年間実践しました。例えば、教科書の内容を要約して、それに関連する動画を見せる例です。地球温暖化がテーマで、動画の中で「スーパー台風」という言葉が子供たちに刺さり、それがどういうものかとなったときに、その時導入したロボットはウィキペディアを参照しながら、スーパー台風の定義の情報を次々に説明しました。小学生は、ロボットがこんなに賢いのかと非常に感心しておりました。先ほど先生がおっしゃったように、子供たちの感情を見分けながら丁寧に対応することは、まだAIには出来ないので、そこは先生方にやってもらう。教科書の内容をリアルにいろいろと教えることは、AIロボットでかなりできます。ですので、私としては、教師かロボットかという二者択一の議論ではなく、仕事を細分化し、AIに任せられるところを見つけて、教師とAIが連携していくような考え方が、人手不足の対策になると感じました。
知事
はい、ありがとうございます。鴻谷さん、AI規制についていかがでしょうか。
鴻谷 則和氏
企業の立場からのAI規制についてですが、日立内部でもTeamsを使って会議を行った後に、議事録が作成できるようになっています。ただ、企業の社外秘情報がありますので、日立用のAIを使っており、情報が外に漏れることに対して規制をかけております。
また、製品を出荷する立場、作る立場としては、医療の世界でのAIは医師の支援というところが大事になっており、診断などは規制されています。デジタル治療薬では、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)が厳しく治験のチェックをします。チェックを通った製品でないと世の中には出ないということになっております。
さらには、日立内部でもAIを搭載した製品については通常の出荷検査より厳しい工程が引かれております。AIを使うこと自体を規制するのではなく、製品として出すときには、出口でしっかり検査をしてから出しております。
知事
ありがとうございます。
県でいえば、様々な皆さん情報を持っています。この情報をAIが勝手にどんどん探して外に出していたら大問題ですので、皆さんの個人情報は出さないようにしています。その上で、世の情報の中でAIに考えてもらう部分だけははっきりしておくようにしています。我々がAIと向き合うときにはこういった部分を意識しています。
だんだん時間も迫ってまいりましたが、他いかがでしょうか。
参加者(14)
1つ私の意見とともにお聞きしたいことがあります。例えば、先ほど自動運転のバスやタクシーなどについてお話がありましたが、私は、小さい頃から車が好きで、将来は車を自分で運転してどこかに行くという楽しみを趣味にしたいと考えております。ただ、自動運転の安全性は100%になったら自身で運転する機会がなくなってしまうのではないかと懸念しております。こういった面での、AIと人間の共存というものについてどのようにお考えか、また、AIにとって変わられたくないものがあればお聞きしたいです。
知事
山口先生いかがですか。
山口 高平氏
世界情勢を考えると、自動運転が広がっていくのは避けられないです。例えば、移動会議室ですが、大きな車の中に入ったら、そこがミーティングルームになっていて、会議をしている間に目的地に到着してしまうというものです。こういった移動会議室がアメリカではすでに登場しています。日本もしばらくしたら出てくると思います。しかし、マニュアルで運転する車は残ります。車の台数は減るけれども、ゼロには絶対にならないので、運転は可能です。
そして、安全性についてですが、「車車間通信」という方法があり、5Gであれば「車車間通信」ができるようになり、人間が運転するよりもはるかに安全性が高くなります。それを体験すると、運転しないほうが良いと考える人たちも増えると思います。それでも、マニュアルは少し残ると思います。
知事
はい、ありがとうございます。大丈夫ですよ、残りますからね。
最後、どなたかいかがですか。
参加者(15)
先ほどの教師のお話のように、人と感情を接して仕事をしていかなければならない職業の方々はあまりAIには侵されずに仕事ができると聞きましたが、そういう職業もAIやロボットとの共存が必要だと考えられますか。
知事
先ほどの自動運転の話もそうですけれども、全部が自動運転に替わるとか、全部がロボットに替わるとかは、人間社会ですからやはりないですよね。ですので、人間と新しいテクノロジーがいかに協働して生きていくかということを模索するということだと思います。教師のように、人間として感情で触れ合って子どもたちの将来を支えていく、という想いをテクノロジーが補完することになり、先生が全部AIに入れ替わることはないと思います。だからこそ、人間に最後に残るものは何なのかをしっかり考えるべきとだと思います。
議論をしてまいりましたけれども、高校生からいろいろと質問をしていただきました。活発な議論になり非常に嬉しいです。やはり、人間とは何かということを今日の皆さんとのやりとりの中で私自身も考えさせられました。人間が絶対失わないものは何かと言えば、やはり感性であったり、大きな喜びを感じる心、感動する心、計算では出てこないものは我々が大事しなくてはならない、人間として大切なものではないかと思います。そして、それをAIとうまく協働しながら、新しい人間像をつくっていく必要があると感じました。
ちょうどお時間でございます。今日はゲストお二人含め、皆さん長い間お付き合いいただきましてありがとうございました。
参加者アンケートに記入していただいた皆様からのご意見を載せております。
参加者ご意見(抜粋)(PDF:170KB)
企画調整部 企画調整課
電話 0463-22-9186
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