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更新日:2023年11月28日
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平成27年10月13日藤沢合同庁舎で開催された黒岩知事との“対話の広場”地域版(湘南会場)開催結果(速報)
黒岩知事との“対話の広場”地域版 (湘南会場)
日時 | 平成27年10月13日(火曜日)18時30分から20時00分 |
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会場 | 神奈川県藤沢合同庁舎 |
テーマ | マグネット地域 |
地域テーマ | 新たな高齢者介護を考える |
内容 |
1 知事のあいさつ 2 事例発表 【事例発表者】 加藤 忠相 氏 大江 守之 氏 |
3 知事によるまとめ | |
参加者数 | 124名 |
こんばんは。神奈川県知事の黒岩祐治です。
本日はお忙しい中、このようにお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
この“対話の広場”地域版は、県内5つの地域に私が直接出向いて行って、県民の皆さんとその時その時の課題について議論をする場です。これまでも4年間で3,000人を超える方々とこういう形で議論してまいりました。他にも、県庁本庁舎を使った“対話の広場”も定期的にやっておりまして、これまで大体6,000人の方と直接対話をしてまいりました。
私はこの会が大好きでありまして、ここでいただいたアイデアをすぐに実行したこともありました。今日どんな展開になるかということを、たいへん私も楽しみにしているところです。基本的にシナリオはありません。
今日のテーマは「新たな高齢者介護を考える」といたしました。今、県はヘルスケア・ニューフロンティアという取組を進めています。強烈な勢いで訪れる超高齢社会、これをどう乗り越えるかが最大の課題ですね。これを乗り越えるために、最先端の医療技術を追求するアプローチ、例えば再生医療やロボット技術などのアプローチとともに、「未病を治す」というアプローチ、この二つを融合させながら、健康寿命を延ばしていく、そういう取組を進めているところであります。今月の22日、23日には、世界で初めての「未病サミット神奈川2015 in箱根」というイベントを開きます。そんな中で、皆さんで介護が必要にならないようにするためには何をすれば良いのかということを県民運動としてやっていこうとしているわけであります。
また、そうはいっても、実際に介護が必要になられる方もいらっしゃいます。その皆さんに対して、どうすればよいのか、それとともに自分がそうなったときに、どうすればよいのか、ということも非常に大きな課題となっていると思います。今の超高齢社会の進み方はすごく速いですね。100歳を超えた方が全国で6万人以上いらっしゃる。そういう時代になってまいりました。長生きできるのは、幸せなことです。素晴らしい社会です。でも、長生きするならできる限り、元気で長生きしたい。そう思うのは、みんなの共通した思いではないでしょうか。では、具体的にどうすればよいのかという大きな課題があります。
そんな中で、今回この湘南地域で敢えてこういったテーマを選んだのは、今日いらっしゃっている加藤さん、この後発表していただきますが、彼とたまたまお目にかかってお話をする機会がありました。私は知事になる前は、フジテレビのキャスターを長い間やっておりましたけれども、フジテレビを辞めた後、一年半は国際医療福祉大学の教授として教えていました。その時の御縁があって、知事になった後に、たまたま加藤さんにお目にかかりました。そして、やっていらっしゃることを聞いて、目から鱗というか、自分の頭の中で考えていた「介護」というものが、がらっと変わり、これは素晴らしいことだなと思いました。これは藤沢から始まっている話でありますから、これをもっと大きく広げていきたいな、と思ったのであります。各地域で取り上げるテーマは地域ごとに全部違いますけれども、この湘南地域では、「新たな高齢者介護を考える」というテーマを選びました。
加藤さんのプレゼンテーション、その後大江先生のプレゼンテーションがあります。そのあとのシナリオは決まっていません。“対話の広場”ですから、対話があってこそ前へ進んでいきます。質問でもいいし、自分の意見を言ってもいいし、自分はこんなことをやっているというアピールでもいいし、県でこんなことをやってくれという要望でも結構です。このテーマに即していれば、どんな発言でも結構です。それでは、最後までよろしくお願いします。
はじめに、加藤忠相さんをご紹介します。加藤さんは、株式会社あおいけあ代表取締役、藤沢市小規模多機能型居宅介護連絡会会長、特定非営利活動法人ココロまち理事長を務めていらっしゃいます。平成24年11月に「かながわ福祉サービス大賞から福祉の未来を拓く先進事例発表会から」において大賞を受賞。その取組は、テレビや新聞、雑誌等多くのメディアで特集されています。
こんにちは。黒岩先生の教え子の加藤と申します。
今日のテーマは「新たな高齢者介護を考える」ですが、私がやっていることは、新しい介護ではありません。そもそも、新しくなっていないというのが、正解だと思います。1963年の老人福祉法で我々の仕事は、「療養上のお世話」と定義されています。未だに、2000年の介護保険法施行から、そのまま「療養上のお世話」が行われているのが現状です。本来、2000年の介護保険法では、我々の仕事は「自立支援」と書いてあります。高齢者の状態を軽減、要するに良くすること、また悪化の防止や維持することが、介護職に求められている仕事です。だから、やってはいけないのは、悪くすること。自分の事業所に高齢者を集めてお世話になる高齢者をつくっていたら、これはある意味悪くしていますので、本来、介護保険報酬をもらうべきではないと私は思います。しかし、未だにそれが、介護として定着してしまっているのが現状です。
2010年から「地域包括ケア」という形で進んでいますので、私が行う小規模多機能型居宅介護サービスは、地域密着型サービスというカテゴリーで、藤沢市に指導監督権限があって、藤沢市とともに、高齢者も障がい者も子どもも一緒にやっているものになります。なので、子どもだけ見ているわけではない。老人福祉法は、例えば車の営業でいえば、40年前の看板のままで昔の製品を売っていこうと介護職に言っているわけです。これを売っていこうと言って喜んで売れる介護職はいません。今、Mac Book Airの最新版を売るならわかりますけれども、ワープロの文豪を売ろうと思っても売れませんよね。なのに、介護職の質が悪いというのは失礼だと僕は思います。未だにこのまま商売が成立してしまうのがおかしいのであって、ちゃんと最新版に切り替えていかなければいけないと思います。
例えば、認知症。うちの利用者さんたちの9割以上は認知症の方です。認知症という病気の中核症状で困っている方たちを放っておくと、周辺症状・随伴症状が出ます。認知症の問題というのは困っていることが見えない。他の病気だと顔が赤くなったり、苦しくなったりして見えるのですが、認知症は見えないので、困った挙句に出た行動を認知症と勘違いすることが多い。
では、介護職員は何をしているのか、中核症状と周辺症状のどちらにアプローチをするかというと、多くの場合、周辺症状にアプローチします。徘徊するから鍵を閉める、弄便するからつなぎ服を着せる、幻覚・妄想を見ているから薬を飲ませて寝かせておくというのでは、介護職は必要ないです。必要なのはその人の環境などを整えて、その人の性格、素質、職歴などを踏まえてアプローチする。困っているところを困らないように支えてあげるのが介護職です。うちのお年寄りは認知症ですが、おそらく周りから見て認知症だとわからないです。困っていないからです。
これまでのサービスは分断されていたが、統合していかなくてはならない。事後的対応だったものを、全て事前的対応に切り替えていかなければいけない。施設収容型をアウトリーチ(訪問)型に変えていくのが、これからの介護です。今日までやってきた介護が明日も継続するという考え方でいる事業者は淘汰されないと、この先は介護保険財政、医療財政はもたなくなります。
うちの事業所は、六会日大前の旧町田街道のあたりです。うちはグループホームと小規模多機能の2か所ですが、塀と柵を全て壊しています。旧町田街道は車の通りが激しくて、歩道もない道路なので、塀を壊した後は、子どもたちが事業所の中を通って通学するようになりました。サラリーマンも、事業所の中を通って駅に行きます。放課後、高校生のカップルが手をつないで歩いているのを見たおじいちゃんおばあちゃんが、「昔はあんなことはしなかった」とやっかんでいたり、そういうのが当たり前に見える環境です。
僕らの介護の仕事は「自立の支援」ですので、お茶をいれてあげる、肩を揉むなどの業務はしません。それをおじいちゃんおばあちゃんがどうやったらできるのかを考えていくのが、僕らの仕事だと思います。だから、お年寄りはご飯の準備をするし、片付けもします。介護度がついていて認知症の方ですが、誰も世話になっている顔はしていません。僕が夜勤のとき、皿を洗おうとすると「男が台所に立つものじゃないからどいて」と言って、おばあちゃんが洗ってくれます。車の関係の仕事をしていた認知症のおじいちゃんが車のタイヤ交換をしてくれています。
また、事業所の様子はNHKの「おはよう日本」で取り上げられました。寝たきりのおじいちゃんが何度も事業所に通って、パジャマから着替えるところから始めます。おじいちゃんは農家だったので、畑を始めました。収穫したときにNHKが取材に来て、おじいちゃんはカメラに向かってどや顔でした。「私もこれ60年やっているから底力といったら底力」と言って、いい笑顔を見せてくれました。
なぜこういうことができるのか。記憶は、大まかにいうと4種類に分かれます。(1)意味記憶、(2)エピソード記憶、(3)手続き記憶、(4)プライミング(呼び水)記憶です。(1)意味記憶というのは、りんごを見て「これはりんごだ」とわかるものです。(2)エピソード記憶というのは、旅行の記憶などです。沖縄に行ってどこを回ったという記憶です。(3)手続き記憶は手が覚えているもの、縫い物や車の運転などです。(4)プライミング(呼び水)記憶は、「肉」という字を読んでもらってから、「子どもの好きなメニューは何ですか」と聞くと、半数が「ハンバーグ」と答えます。オムライスでもスパゲティでも良いのですが。ただ、4つの記憶のうち、(1)(2)は認知症になると壊れやすいです。(3)(4)は残ることが非常に多いです。うちのおばあちゃんたちは料理をしますが、手続き記憶に働きかけてケアをしているからできるのです。
よく、その人らしさを支援するという事業所がありますが、「あなたの私らしさって何ですか」と聞かれて答えられる方はなかなかいないと思います。例えば、僕は楽器をやっているので、拍手をもらうと、少し自分らしいかなと思ったりします。なので、その人にとってどれだけ充実して、どれだけいい時間を過ごしてもらえるかということが、その人らしさの源泉だと思います。
実際、多くの方の介護度が改善していて、1事業所あたり1,000万円の改善となります。10か所あれば1億円の改善です。子ども世代に借金を残さなくてすむわけです。
僕の先輩の小山剛(こやま つよし)さんは「地域密着型が高齢者だけ見ているならサギ」と言います。おじいちゃんおばあちゃんたちは毎年田植えをします。子どもたちは通学路として通っているので、田植えをしているのを見ています。そうすると真似したくてしょうがなくて、勝手に模倣を始めます。面白いことに、子どもたちの苗は成長不良を起こしていますが、おじいちゃんおばあちゃんの苗は成長しています。地域の子どもたちは、うちのおじいちゃんおばあちゃんを認知症だとは思っていません。うちの娘も認知症の番組を見て、「うちに来ているおじいちゃんおばあちゃんは認知症じゃないね、普通だもんね。」と言いました。それくらい、普通でいられるのが認知症です。
また、おじいちゃんおばあちゃんが作ったひょうたん型の貯金箱やじゃがいもなどを地域の子供たちが売ってくれるようになりました。毎年その人数が増えていきます。子どもたちはどんどん商売上手になります。3年前から、子どもたちは「今年はおじいちゃんおばあちゃんが作ったものを売らない。」と宣言をして、自分たちが作った物を自分たちの店に出すようになりました。うちの事業所のお祭りにはたくさんの人が来るので、売り切れます。いくら儲かったのか聞くと「原価が200円で、300円ずつみんなで分けて、残りは被災地に寄付する。」と答えました。僕はそれを聞いた瞬間、泣きそうになりました。大人が忘れかけているときに、子どもたちが被災地に寄付するのです。この子どもたちは、5年10年後には地域の核になる。大人の意識が変わることも大事だけど、子どもたちが「それが当たり前だね」と思える地域をつくっていくことが非常に大事です。
うちのあるスタッフの娘は学校が終わると、うちの事業所に帰ってきていました。彼女は高3の進路希望に、僕に相談もなく「あおいけあ」と書きました。現在はうちで働いています。おじいちゃんおばあちゃんに非常に愛されています。
玄関では駄菓子屋さんをやっていて、仕入れはおじいちゃんおばあちゃんたちと行きます。おじいちゃんおばあちゃんが店番をして子どもたちに売っていて、地域の子どもたちの居場所にもなっています。
お年寄りに「散歩に行こうよ」と言うと「寒いから」などと断られることが多いです。でも、「地域の清掃活動に行くので協力してもらえますか」と言うと、「しょうがないな、行こう。」と腰を上げます。世話になるという立場は辛いですが、社会の役に立ちたいという気持ちをうまくサポートすることが非常に大事です。
月1回、地域の清掃活動に全員で出かけるし、花壇の植え替えも地域の方と一緒にやっている。お年寄りを被介護者として扱うのではなく、社会資源としてどう捉えていくかが、この先、非常に重要になってきます。
また、うちの認知症のおじいちゃんたちが餅をつき、認知症のおばあちゃんたちが地域の子どもたちに餅を配っています。うちの行事は、おじいちゃんおばあちゃんを楽しませるためではなくて、おじいちゃんおばあちゃんが地域を楽しませるためのものなのです。
これからの介護は、自立支援をしなくてはいけない。高齢者と一緒に掃除をすることで、初めて介護をしたということになる。次に、これを地域に持っていくと、神社や公園の掃除などをするおじいちゃんおばあちゃんは社会資源、地域の方から「ありがとう」と言われる存在になります。事業所の庭で花を植えたらリクレーションですが、市民病院や公園で花を植えたらボランティアです。なので、地域づくりのデザインをすることが、この先の介護職の仕事だと思います。
最後に、地方分権の試金石の話です。今までは利用者、スタッフ、サービス、施設で終わることが多かったです。自宅(市区町村、ご家族)、病院、介護保険にアプローチするのが従来の小規模多機能で実現する介護です。
僕の先輩たちは、これからは地域が大切だと言っていました。あおいけあが実現している介護では、子どもたちが関わっています。子どもたちにとって、おじいちゃんおばあちゃんは、地域の資産です。うちのおじいちゃんおばあちゃんは、経済活動も社会活動もしております。労働資産でもあるわけです。施設から働きかけなくても、地域住民が当たり前に関わってくる介護施設を増やしていくことが求められていると考えています。
御清聴ありがとうございました。
続きまして、慶應義塾大学総合政策学部教授 大江守之先生をご紹介します。大江先生は、民間シンクタンクを経て、厚生省人口問題研究所に入り、地域人口や家族・世帯に関する研究に従事して来られました。平成9年より現職、平成19年に慶應義塾大学SFC研究所内に地域協同・ラボラトリを開設し、代表を務めていらっしゃいます。
御紹介いただきました大江です。加藤さんのお話、本当に素晴らしかったです。私の方はちょっと理屈っぽい話になるかもしれませんが、テーマとしては共通しています。
高齢者の介護をどのように人々が考えているかという調査がありまして、老親の介護は家族が行うべきと考える人が1998年には74.8%いましたが、介護保険が導入されて、2013年には56.7%に減った。それでもまだ、家族で介護をする方が良いという人が半数以上です。しかし、これは介護できる家族がいる場合といない場合にだんだんわかれてきているということでもあると思います。先ほどの加藤さんのお話にもあったとおり、高齢者はお世話される存在、してくれることを「ありがとう」と言って受けていなくてはいけないという考え方が日本の社会にはずっとありました。
戦前の日本は、やっと発展途上国から脱しようという状態で、子どもが非常に多かった。また、多くの人たちが農村的な環境の中に住んでいました。農村的な環境というのは家族の中で様々なものが賄われていて、そして、それを取り巻くムラという地域社会があって、そこへ参画できるのは家長だけでした。その地域社会の周りに明治時代以降にできた近代社会があったという状況です。こういう中で、高齢者の介護のあり方という価値観は、戦後になってもあまり変わらずにありました。
戦後社会では、1930年代から40年代に生まれた人たちが、核家族をつくっていきました。大都市に移動し、子どもは2人になって、この藤沢も含めた大都市郊外で新たな家族をつくった。夫は職場に出かけて、妻は専業主婦として子どもの成長を助ける。そして、地域の役割は縮小して、代わりにその周りに行政サービスや市場を通して提供されるサービスができてきた。このサービス供給の仕組みを「強い専門システム」と呼ぶことにします。
21世紀に入り、核家族が解体します。子どもが独立し、夫婦のみになって、片方が亡くなると1人になるというように、家族が大きく変化しています。そうなると、教育や介護、病気のお世話など、いろいろなサービスを家庭内でやり取りできなくなってくる。その部分を行政サービスや市場サービスで全部埋められるかというと、埋められない。その中間にある地域社会についても、これまでの機能だけでは必要なサービスを賄えないので、何か新しい仕組みが必要になってくる。この新しい地域社会のシステムを、仮に「弱い専門システム」と呼んでみようと考えました。
「強い専門システム」は、端的な例は「施設」です。「施設」は近代社会になって、我々が本当に恩恵を受けているもので、医療、教育、保育、介護などのサービスを提供します。特に医療は発展して、多くの命が救われるようになった。「医療」という機能・サービスは、「病院」という場において、「専門職」である医師や看護師が、「患者」という当事者に対して行うものです。介護についても同様で、介護老人福祉施設で介護福祉士が要介護高齢者を介護する。介護の場合には医療や教育とは異なり、サービスの利用者が居住施設という「住む」ことを通してのみ得られるサービスを受ける点が他と違いますが、基本的な構造は同じようになっています。
こういう形で家庭の中でできなくなった部分を強い専門システムに頼ろうとすると、ずっとここを大きくしていかなくてはなりません。しかし、財政上の制約もあり、個人の自立した自由な生き方を実現していこうとすると、これだけではうまくいかなくなってきたわけです。
では、どういうものが必要かというと、先ほど、加藤さんが実践していらっしゃる内容について発表いただいて、これが「弱い専門システム」の非常に良い事例だと思いました。
強い専門システムである医療と対比してみます。医療というのは、強い専門家である医師や強い育成システムである医学部、専用のサービスを提供する病院、強い法的規制、医薬品や医療機器などの強い市場システムがあります。しかし、そこで恩恵を受ける当事者は、患者という人格の一側面だけで捉えられ、病気が治れば患者という状態から脱して、普通の人になります。「患者」という立場にある当事者は、医療というシステムに依存する傾向があります。「先生に任せておけば大丈夫」ということです。強い専門システムはこうした依存を生みがちです。
それに対して、「弱い専門システム」は、弱い専門家がいて、多様なサービスの場がある。これは建物があるというだけではなくて、先ほどの事例発表のように田植えをする空地や、いろいろなものがあって、そこでさまざまな交流があるわけですね。さらに、弱い保護と規制、弱い市場システム。そして、個人が一人の人格を持った人として存在します。患者という一側面だけ捉えるのではなく、また要介護高齢者として介護されるだけではなくて、一人の個人として存在するということです。そうすると、ここでは当事者の仕組みへの参加と自立が達成される可能性がある。
家族が弱まっている部分を強い専門システムで全てカバーすることはできない。また、旧来からある地域社会のつながりは、十分に機能するものではない。だから、新しくつくっていかなければいけない仕組みとして、このような弱い専門システムが必要なのではないかということです。
このことに気が付いたのは、横浜市戸塚区でやっているコミュニティカフェの活動や、加藤さんの事業所の近くで西條さんが代表としてやっている「高齢者グループリビング」という高齢者の新しい住まい方の実践など、さまざまなものから学んだからでした。加藤さんの活動は弱い専門システムの中核的な一つだと思います。
介護保険制度に必ずしも結び付かなくても、広い意味でのケアを行う上で、こういった仕組みは有り得るのではないか、具体的な展開が有り得るのではないかを探っていくことが、これからの介護を豊かなものにしていく一つの道筋ではないかと考えています。
ありがとうございました。
ありがとうございました。私が加藤さんの話を聞いて、目から鱗が落ちたという感じが伝わりましたでしょうか。聞いてみると、加藤さんの取組は普通だなと思うわけですが、普通の話が現実の介護の世界で実現できていないのはなぜだろうと思います。それは、大江先生の理論の中で、しっかりとつながっているなと感じました。
まずは、私から質問したいと思います。なぜ他の施設では、お世話ではなく自立支援をするということがなかなか実現できないのでしょうか。
介護保険制度の開始後も、旧来の老人福祉法を踏襲した介護サービスをそのまま提供し続けているからだと思います。
「高齢者はお世話される存在である」という考え方を良しとしているからだと思います。一方で、高齢者の家族も施設にお世話してほしいと頼むわけです。「たくさんお世話をしてくれるところが良い施設、放っておくところは良い施設ではない」と考えているのです。親を介護施設に入れる際「ちゃんと息子がいるのになぜ施設にいれるのか」と後ろ指を指される状況はまだあります。息子に代わってたくさんお世話をしてくれるところがいい施設という考え方が、介護者をそうさせているわけです。もっといいやり方があるということを示していかなくてはいけないと思います。
加藤さんの施設でも、よくお世話をするようお願いする家族はいましたか。
家族からの要望で一番困るのは、「怪我をさせないようにしてください。できれば、薬を飲ませて寝かせておいてください。」というものです。自分たちの介護に対する考えや成果を説明し、納得してもらうようにしています。
私たちの施設の利用者は、他の施設の利用者と比べて、はるかに動いていますが、事故発生率、転倒率は非常に低いと思います。筋肉の使い方が違っているからです。藤沢市の介護保険課で地域密着型介護に独自加算をつけているため、事業所に理学療法士を配置することができます。理学療法士と介護職が連携して対応できるため、転倒率が低くなっています。
小規模多機能型居宅介護について、改めて説明していただけますか。
民間の方が自宅や公民館で高齢者の面倒を見ていた「宅老所」というサービスを、平成18年に厚生労働省が制度化したものです。そこに通うこともできるし、泊まることもできる、スタッフが自宅に訪問してお世話することもできる。今までの介護保険サービスを例えるならば、ネクタイ屋や靴下屋などのワンアイテムショップが地域に点在しレジがケアマネージャーであるような状態で、使い勝手が悪く動きも遅かった。これがショッピングモールの中にあると使いやすい。同じ地域の中でサービスを提供するのが小規模多機能で、高齢者が地域で生活するために必要なサービスを必要に応じて受けられることが特徴です。
これはまさに、大江先生の言う「弱い専門システム」そのものでしょうか。
そうですね。介護保険制度は、特別養護老人ホームなどのような「施設サービス」と「居宅サービス」に大きく二分されます。小規模多機能型居宅介護は、地域にあるものを使って提供される様々なサービスを組み合わせて使い勝手を良くした「居宅サービス」です。厚生労働省もその必要性を認めて制度化されました。
小規模多機能型居宅介護を支えていくと、派生して地域住民が参加する場がつくられていきます。そこに「弱い専門システム」が機能していくと考えています。加藤さんの事例発表の中で、まず自分の事業所にお花を植えて、次は外に出て行って公園の管理をするという話は非常に良かった。誰かが一緒に公園に行って、その人たちが楽しんで作業しているのを支援していかなければならない。そういうことがだんだんできてくるということが、小規模多機能型サービスをやっていく中で、より広く行われるようになる、そういう可能性があることを見出して、よりそっちの方に行こうという流れになってきたと思う。そこに一番伝えたいところがあると思う。
私から質問をしてきましたが、皆さんの声があってこその“対話の広場”です。ここからは、会場の皆さんとの意見交換に移りましょう。
高齢者が参加する場所をつくることは非常に大切だと思っています。ユニクロでは、着なくなった服を回収し、洗濯して、貧しい国に配布する活動をしているそうです。同じように、不用品を回収、仕分けして、国として海外の困っている国に送ることで仕事づくりにもなり、良いのではないか。
専門家の意見を聞いてみましょう。
すごく良い御提案だと思う。量的なものをうまくさばける仕組みをつくっていくことが必要。実際に、リサイクル品を集めて途上国に送る活動をしている団体の作業現場に行ったことがありますが、いろいろなものが持ち込まれていて、それを仕分けするのはすごい作業量でした。作業に参加しやすくなる仕組みをつくることができれば、非常に良い取組だと思います。
生きがいづくりのきっかけになるアイディアではないかと思いました。
横浜市栄区は高齢者が大変多く子どもが少ない地域です。施設に入れない高齢者への対応や自宅介護について、どのように考えますか。
例えば、藤沢市でも特養待機者が1,400人くらいいるので施設整備を進めようという話がありました。結果的に、その1,400人の中には要支援の方も含まれる一方、介護度3以上の方はほんの数百人で、現状の施設整備の計画で足りてしまうものでした。なので、本当のニーズがどれくらいあるのか、実際にそれが必要なのか、ニーズではなくウォンツではないのかということを考える時代にきていると思います。今後100年で日本の人口は4分の1に減る中で、将来の世代に負債を残さないためにも、安易な施設建設は避けて、代替案を真剣に考えるべきだと思います。
私はいろいろなところに視察に行きます。以前、新しい介護施設に行ったとき、施設ができあがっているのに、使っていないスペースがありました。なぜ使っていないのか尋ねたところ、人手が足りないのです。施設をつくることはお金さえかければできる。誰がそこで働くのかというと人材が足りない。人材不足によって新しく施設を整備しても一部使えないという現状があるのです。
現在、首都圏は高齢者が多くなっている一方で、介護人材が少ない。そこで、東京圏の高齢者を、介護サービスに余力がある地方に移住させるという話がありますが、皆さんどう思いますか。私はすごく抵抗があります。自分のふるさとに帰るなら良いのですが、介護の余力があるからという理由で縁もゆかりもないところに行くとは思えない。それよりも、神奈川県内で、介護が必要にならないようにする流れをつくることが一番大事だと思います。だから、「未病を治す」。食、運動習慣、社会参加によって、病気にならないようにしよう、介護が必要にならないようにしようという取組を進めていく。そうすれば、神奈川県では、安心して年をとれる。どんなに年をとっても元気でいてくれれば皆幸せですからね。そういう発想で進めています。
私たちは男性ボランティアということで、2002年10月に、二十数名で活動を始めました。当初、地域の社会福祉協議会と連携しながら、高齢者の訪問見守り活動をしていましたが、実際やってみると難しい問題もあり、どういう形の仲間づくりが必要なのかを勉強しました。そこで、3年前から立ち寄り所を始めました。毎週木曜日に開催し、毎回、男女60名前後の方が立ち寄ります。麻雀や囲碁、将棋、コーラスなどで楽しんで、できるだけ介護のお世話にならないようにしている。その中で、会場の確保に悩んでいる。現在、県営横山団地の集会所で活動しているが、団地の建て替えが決まっている。仲間づくりの輪を広げるため、県にも御協力をお願いしたい。
ボランティア活動は、「弱い専門システム」を支える重要な要素ですよね。
ボランティア活動を事業として運営していくには、いつでも使える自分たちの場所が必要になります。常設の活動場所を確保しようと思うと、とても大変でリスクを負わなければならない。私も参加している横浜市戸塚区のドリームハイツのコミュニティカフェでは、空き店舗を借りて高い家賃を払っている。活動場所を確保するのは本当に難しく、私自身何か手立てはないものかと思うことたくさんがあるので、知恵を絞って考えるべきテーマだと思います。
加藤さんの施設でもボランティアの方が参加されているのですか。
ボランティアとして高齢者の「お世話」に来ていただくのはお断りしています。おじいちゃんおばあちゃんの仕事を取ってしまうことになるので。
今後、要支援者のケアはボランティアが担う流れになると思うが、逆に、要介護の高齢者は介護スタッフの協力を受けてボランティアの担い手になることができます。活動場所の確保という話であれば、小規模多機能型事業所は、藤沢市の承諾を得てボランティアセンターとすることができます。場所や人にお金をかけずに、生きがいづくりにつながる政策を考えられるか。例えば、公園の枝落としで出たごみを、おじいちゃんおばあちゃんが薪割りをすることで健康増進につながる。薪を積んで販売することもできるし、災害時には燃料にすることもできる。どれだけ発想の転換ができるかが重要だと思います。
面白いですね。ボランティアで困っている人を助けてあげると思い込んでいたら、その人たちがやることがボランティアになってしまう。どっちが主体かわからないですね。
現在、団地の中での高齢化の進み方は速いですね。一人暮らしの高齢者の増加や建物の老朽化など、様々な問題を抱えています。一人暮らしの高齢者が、社会とのつながりが薄くなって引きこもっていると、さらに具合が悪くなってしまう。その人たちを収容する施設を用意しようと思ったら、どれだけつくればいいでしょうか。
県では、発想を変えて「健康団地」という取組を行っています。高齢者が団地に住んでいるなら、そこに訪問介護、医療を持っていく。また、空いている部屋に若い世代の入居を促して活力を生み出す。さらに、団地内で住民が交流する場をつくるなど、様々な取組を「健康団地」というコンセプトの中でやろうとしている。団地を建て替える際には、最初からそういう考えを元に設計している。今回のお話で伺ったボランティア活動も、「健康団地」のコンセプトの中で活かしていきたいと思います。
安倍総理が介護離職ゼロと言っているのを皆さんもお聞きになっていると思う。それは、施設を多くつくっていく方向か、小規模多機能型などの訪問サービスを増やすものなのか、はっきりしたものが見えてないと思う。小規模多機能型居宅介護は大変良い制度だと思うが、その将来性や、気を付けなければいけない点、課題をお聞きしたいです。また、今後、県としてどこに力を入れていくのでしょうか。
小規模多機能事業所は、地域づくりのパートナーという視点で選定しないと、ただ介護サービスを提供するだけの営利企業が入り込む危険性があります。
安倍首相の介護離職ゼロの話は、事業所をたくさんつくって介護で仕事をやめなくてよい人を増やすという方向性ですが、特別養護老人ホームをたくさんつくるだけではないと聞いています。例えば、小規模多機能だと、人口1万人規模に対して現在0.25か所あるのを2025年までに2か所に増やす、つまり8倍に増やすという目標が掲げられている。他のサービスに比べて目標設置数が圧倒的に多い。これは、小規模多機能型事業所の設置費用が安いからです。
これまでの介護保険制度の問題点は、例えば、私が介護度2で1万6千単位を持っている高齢者である場合、多くのケアマネージャーは、その人に必要なサービスではなく、その人が持っている1万6千単位分のサービスを組むので、余りが出ない。小規模多機能では、1万2千単位ほどでケアマネージャーの報酬を含んだ上で1ヶ月間利用できる、余りが出る。これをうまく整理することによって、将来財政破綻することを防ぐことができる。
このままでは、介護保険料を1万円以上にするか地域包括報酬を導入しなければ、介護保険制度はもたないと言われています。恐らく地域包括報酬になると思います。これは、1つの学区にいるお年寄りを学区に対して配られるお金ですべてケアするという制度にシフトチェンジするということ。そのときに、1回当たりの単価でサービスを提供している事業者は立ち行かなくなっていく。それまでに、私たちは将来の財政を考えて介護事業所を運営していかなければならないし、サービスを受ける側も本当に必要なのか、それはニーズではなくウォンツではないのか、よく考える必要があります。
今、「学べる地域」をどのようにつくるかが重要だと思っています。私たちは、この先の光景がわからない中で日常生活を送っていますが、恐らく公的サービスはお手上げになると思います。そのとき、市民と連携してどのように地域を継続できるか考えて事業所を運営しなくてはならない。小規模多機能は単なるツールで、これをどうやって使うか問題。小規模多機能がすばらしいのではなく、うまく使える事業所をどう選ぶかが重要。
例えば、藤沢市のある団地の一角で小規模多機能型事業所を運営している。そうすると、自分の部屋で訪問サービスが受けられ、不安になったら泊まりに行くことができる。そこに子どもたちが集ってくれば、子どものカフェができる。朝、学校に行く前の子どもたちが高齢者の部屋に寄ってあいさつをする活動もできる。空き部屋を大学生に安く貸して、集まってくる子どもたちに勉強を教えることもできる。そういう拠点として、小規模多機能はうまく使えば非常に有効だが、事業者選定を誤るとただの金儲けになってしまいます。
いろいろな地域に、加藤さんの施設のように地域に根ざした事業所がそれぞれあります。事業の運営方法について情報が伝わり、自分で事業所をつくってみようという人をどうやって増やしていくか、そのために行政にどのような支援ができるかが重要なテーマだと思います。横浜市は、市民活動支援センターにおいて、まちづくりをする上での大事な考え方やノウハウを直接伝える活動をしており、参加した人が知識を地域に持って帰り広がっています。そのような支援をすると、地域づくりのパートナーとしての小規模多機能型事業所が増えていくのではないでしょうか。
加藤さんの施設のような良い事業所もあれば、そうではない事業所もあると思います。一般の人からはわからないですよね。利用者の介護度が下がると、事業所の経営上プラスになるのでしょうか。
介護収入が減るのでマイナスになります。
高齢者を施設に囲って悪くしておいて、寝かせておけばお金が儲かるから良いと考える事業所も出てくるでしょう。
行政の立場として、これが一番の大きな課題だと思っています。頑張って高齢者を元気にさせると、その事業所が損をする仕組みになっている。これはおかしい。努力した事業所が儲かる仕組みをどのようにつくるかが課題だと思っているが、何か良い知恵はないだろうか。
介護保険制度について詳しく理解しているわけではないので何とも言えないが、介護保険は市町村の管轄であるので、市町村が理解して市町村の裁量で、良い事業所がきちんと経営的に成り立つように支援するということだと思います。介護報酬の加算以外にも、例えば、市町村税である固定資産税などの減免処置などができるかもしれません。つまり、市町村の権限でできる範囲で、客観的に市民に公開する中で、応援できることがあるのではないかと考えます。
行政としても、頑張った人が報われる制度をどうやってつくれるかを課題として持っています。県では「未病を治す」取組を進めていますが、運動習慣や食生活に気を付けて、健康に気をつかっている人ほど病院にかかる回数が減り、健康保険料を払っていてもその恩恵を受けられません。一方で、暴飲暴食や喫煙など、不健康な生活を送っている人の方が、病気がちで健康保険を利用する機会が増えます。よく考えると変な話ではありませんか。
未病を治す努力をした人が、報われる仕組みをつくるためにはどうすればよいか。介護保険制度と同様に、大きな課題だと思っています。
意識が高い人ほど損をし、意識が低い人が得をするという問題の根本にあるのは、教育だと思います。教育の根幹、システムを大きく変えない限り、何も変わらないと思います。
若者の育成という一環で、私は来月、引きこもりの高校生を代表取締役にして株式会社を設立します。当事者目線で引きこもりを支援する事業を起こす予定です。人材不足の根幹も教育問題があると思います。あらゆる問題の根底にある教育について知事はどう考えますか。
非常に重要な指摘だと思います。先ほどの話でも、生活が乱れている人全員が病気になるわけではないし、健康に気を付けていても難病にかかってしまう人はいるので、一概には言えない。なるべく病気にかからないようにする活動が重要ですね。その中で、教育が重要という考えは非常に良いポイントだと思います。
県では、超高齢社会を乗り越えるために「未病を治す」というコンセプトで施策を進めており、これまで中高年から上の年齢層を対象にイメージしていました。ところが、神奈川県の子どもたちの運動能力がとても低いという文部科学省のデータが出ました。小学5年生の女子については、全国ビリです。整形外科の先生にきくと、今の子どもたちはしゃがむことすらできないという。簡単な運動動作もできない子どもたちがいると知って、私はぞっとしました。
未病を治すために大事なことは、食、運動習慣、社会参加です。基礎的な運動能力がついていない子ども、滅茶苦茶な食生活をしている子ども、他人と関わらず引きこもっている子どもは、未病を治す3要素を身につけないまま大人になってしまう。大人になってから、未病を治す取組を始めても手遅れです。教育によって、子どものころから、習慣づけていくことの必要性を痛感しました。そこで、県では、子どもの体力向上を目的として「子ども☆キラキラプロジェクト」を実施しています。
高校生社長にもお話を伺ってみましょう。どういう事業を進めるのですか。
私自身、引きこもっていた時期が2、3年あり、現在単位制の高校に通っている。学校という場が合わず、他に行く場所がなかったため、家に引きこもるしかなかった。学校、家以外の居場所をつくっていけたら良いと考えています。
彼女は学校には行けないが、大和市の小規模多機能型事業所でアルバイトをしています。新しく小規模多機能型事業所を開設する予定がありますが、建材や椅子・テーブルに使う木材は全て彼女の会社から仕入れます。
すごいですね、頑張ってください。
藤沢市の団地で小規模多機能型事業所を運営しています。
子どもの教育は非常に大事だと思います。地域包括ケアが、地域みんなで支え合うという話をしているにも関わらず、この前、団地で子どもたちが子猫を拾ってきた時、大人たちは元の場所に返すよう、餌を与えないようにと言ったのです。これは、子どもたちに対して、目の前に困っている猫がいても放って置けば誰かが面倒を見るという教育をしているのと同じ。介護の問題に当てはめると、目の前に困っている高齢者がいても、専門職が対応すれば良い、医療がやれば良い、という考え方につながってしまいます。地域包括ケアを考える場合にも、子どもの教育を一緒に考えていかなくてはいけない課題だと思っているので、健康団地構想の中に、子どもの教育も是非取り入れていただきたいと思います。
ありがとうございます。君も一言どうぞ。
いろいろとしなくてはいけないことがあるので、今、子どもだけで子ども会議を行っています。
すごいですね。“対話の広場”史上最年少の発言者ですね。頑張ってください。
藤沢市は全国でも先んじて、いろいろな部署が連携しながら地域包括ケアシステムを進めている。神奈川県も市と連携して応援してほしい。
連携していきたいと思います。ありがとうございました。
地域づくりの方向性にどのようなイメージやビジョンを持って広げていこうとされているのか。
自分の祖父は横浜市の特養に入ってそこで亡くなり、現在祖母は横浜市の別の施設に通っている。大学卒業後、自分は祖母のお世話をすることもできるが、それよりも大学で学んだことを活かしてやりたいことがある。自分たち大学生がやりたいことや夢に取り組めるのは、介護施設があるお陰だと思う。加藤さんの活動によって地域づくりにつながる介護を推進していくことへの機運が高まっていると思うが、この機運の高まりが実際の高齢者介護の問題が解決につながるのかお聞きしたいです。
「未病を治す」ということに尽きると思っています。健康か病気か、二分して考えがちで、社会システムもそうなっている。しかし、健康と病気は、二つに分かれるものではなくて、グラデーションで連続してつながっています。少しでも健康な状態に持っていくのが「未病を治す」ということです。自分で未病の状態がどこにあるかをチェックして、自分で病気にならないようコントロールする意識を根付かせていこうと思っているわけです。未病を治すことで、病気になる人や介護が必要な人を減らしていく。
そのためには地域の力が非常に重要。例えば、地域の住民で集まってラジオ体操をすることで、未病を治して健康になるし、コミュニケーションが生まれてきます。このような取組から、意識改革や習慣づけを行っていくことが大事だと思いますので、御理解いただきたいと思います。
今日は、「新たな高齢者介護を考える」という中で、私自身も「なるほど、そうだな。」といろいろなことに気づかせていただきました。自分にとっても有意義な会になりました。御発言いただいた皆様、御参加いただきました皆様、そして事例発表していただいたお二人に心から感謝申し上げたいと思います。このような会は続けていきたいと思いますから、どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
企画調整部 企画調整課
電話 0463-22-9179
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