<取組事例2>
「医療的ケア児・家族に寄り添った情報提供の支援」(平塚保健福祉事務所秦野センター)
当所では、先天性の疾患で医療的ケアを抱えているAくんと家族に、生後3か月の退院時から定期的に家庭訪問や電話をし、関係機関と連携を図りながら、必要なサービスを取り入れるなど個別支援を行っている。Aくんの母はきょうだい児(兄・姉)の育児とAくんのケアを両立する大変さを抱えながらも、導入できるサービスを利用し地域での生活をおくっていた。平成30年度に慢性疾患児やその家族が、地域の中で安心して療養生活を送るための支援体制構築に向けて、当事者の立場から地域の課題を提言してもらう機会を設けた。今までの個別支援の関わりから、「医療的ケア児が通える場所がないから、働くことができない」というAくん母の切実な思いをキャッチしていたためパネリストとして迎え、「退院時必要な情報にたどり着けなかった」「使いたい福祉サービスが利用できず困ったので、柔軟に対応してほしい」などの支援者側への課題提起を皆で共有した。その結果、小児慢性特定疾病部会の下に課題解決に向けてのワーキングを立ち上げ、「医療的ケア児の保護者が、相談先が分からず困らないようにしたい」という目標を掲げ、当事者と支援者の関係を見える化させるための様式と、成長段階に応じた支援や相談窓口の一覧を作成した。本取組を通して、丁寧な個別支援をすることの大切さと、ケースから見えてきた課題を関係機関と連携を図りながら体制を整備していくことの重要性を学んだ。
WORKS
仕事内容
神奈川県は、重点施策として「未病への取組」をあげており、その中で、保健師の活動にもとても関心が向けられています。
例えば、平成25年度から県と市町村は連携して、「かながわ方式保健指導」による生活習慣病重症化予防に取り組んできました。この取組の中で、保健師は確実に保健指導の力をつけてきています。
このように、毎日の活動の中で、保健師の実践力をつけていくことができる仕組みのある神奈川県で、保健師としてのスタートを切ることをぜひお勧めいたします。
元 神奈川県保健福祉人材担当顧問 久常 節子
※かながわ方式保健指導とは
平成25年度から27年度に県内3市町と協働で実施した「かながわ保健指導モデル事業」により構築された、生活習慣病の重症化予防のための保健指導の手法です。
仕事内容
保健福祉事務所及びセンターでは企画調整課(センターは管理企画課)、保健福祉課、保健予防課に配属し、主に以下の業務を担当しています。
保健福祉事務所及びセンター以外にも幅広く配置され、活動しています。
所属名 | 主な業務 | |
総務局 | 健康管理センター | ・職員の健康管理業務 |
くらし安全防災局 | くらし安全交通課 | ・性犯罪・性暴力被害者に対する支援 |
福祉子ども みらい局 |
次世代育成課 高齢福祉課 児童相談所 |
・子育て支援と子どもの虐待予防 ・地域包括ケア及び認知症施策 ・児童虐待対応及び被虐待児童への健康面のアセスメントの支援 |
健康医療局 | 医療危機対策本部室 医療保険課 健康増進課 衛生研究所 精神保健福祉センター |
・感染症・結核対策 ・保険者努力支援制度や糖尿病重症化予防など ・保健師の人材育成、健康づくり ・公衆衛生情報の収集・解析・提供 ・精神保健相談、精神保健福祉法による緊急対応 |
神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科(SHI)
行竹 三紀恵(ゆくたけ みきえ)
私は現在、神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科(SHI)の修士課程で学んでいます。SHIは、「次世代のヘルスイノベーターを育成する」ことを目的に、2019年に設立されました。授業は公衆衛生基礎から公共政策等と科目も幅広く、学生は公衆衛生専門職(行政医師、保健師等)以外にも、製薬企業や海外からの留学生等多様なバックグランドの方がいます。
私は、入庁後、保健福祉事務所や本庁(健康増進部門)を経験する中で、保健師としてよりスキルアップし、神奈川県の公衆衛生に貢献したいと強く思うようになりました。そのためにも、改めて広い視点での公衆衛生を学び、政策形成に携われる力を身に着けたいと思い、大学院への進学を希望しました。県では、職務としてSHIでの学びに専念できる制度があり、それが大きな後押しとなりました(全職種対象の公募制です)。
チャレンジしたいことがあれば、チャレンジできる環境と、それを支持してくれる職場や保健師の先輩や仲間に感謝し、日々勉学に励んでいます。
活動紹介
神奈川県では、「令和6年能登半島地震」の被災地を支援するため、全庁をあげて対応しています!
ここでは、県内自治体に勤務する保健師による被災地支援活動をご紹介します。
- 1.避難所における住民の健康支援・衛生管理業務
- 2.在宅における要支援者の健康管理業務 等
神奈川県では、新型コロナウイルス感染症拡大防止に向けて、全庁をあげて対応しています!
ここでは、県保健福祉事務所に勤務する保健師、県庁に勤務する保健師のコロナ対応をご紹介します。
- 1.陽性となった住⺠への積極的疫学調査の実施
- 2.疑い患者等の医療機関受診や療養施設等の調整を実施
- 3.疫学調査をもとに、濃厚接触者について所内検討
- 4.管轄市町村や警察、消防、医療機関との連絡会議等の開催
- 5.クラスター発⽣予防のための⽀援
- (研修会の開催、福祉施設へのマニュアル作成等)
- 1.保健所設置市や保健所との広域的調整・連携
- 2.クラスター対策チームとして保健所が⾏う拡⼤防⽌対策を⽀援
- 3.無症状や軽症の陽性者の療養期間中のフォローアップ
2020年の国内のコロナ患者発生から2023年までの、神奈川県本庁の保健師が行った新型コロナ対応についてを動画でまとめましたので、ご覧ください。
新型コロナに関する受診調整や入院調整、健康観察、積極的疫学調査など、神奈川県庁の保健所の保健師が行った対応について動画でまとめましたので、ご覧ください。
神奈川県内で働く保健師は地域の中で幅広く活動しています。
2019年3月17日にTVKで放送された、特集『あなたの健康を一生見守ります!保健師のお仕事ファイル』ダイジェスト版をご覧ください。
神奈川県では、これからの県保健師の目指す姿や、今後の県保健師が保健活動を展開していく上で、基本的な視点を確認する際に活用できるものとして平成28年3月に「神奈川県保健師の活動指針」を作成しています。(令和5年3月改正)
その中で、保健師活動を展開する際の理念(=基本となる考え方、根底にある考え方)を、5つに整理し、柱としています。ここでは、5つの柱に沿って具体的な保健師の活動を紹介します。
<取組事例1>
「三浦市、関係団体と取り組んだたばこ対策」(鎌倉保健福祉事務所三崎センター)
三浦市は、第一次産業が多く、大人の喫煙率が高いという地域の特性がある。喫煙に起因する疾患による死亡や国保医療費の支出が多くを占めること、喫煙率が近隣市町より高率であることをデータ化し、住民・関係機関と共有し、地域ぐるみの普及啓発に取り組んだ。令和元年は、こどもから家族に向けての禁煙アプローチを検討し、夏休み期間中の学童保育のこどもたちを対象に、喫煙・受動喫煙防止対策教育を企画し、関係機関と調整し実施した。また教育委員会と協力し市内の小・中学校生徒を対象に、禁煙・受動喫煙防止のポスター原画を夏休みの課題として募集し、コンクールを実施。選出された作品をポスター化して市内主要駅や店舗で掲示している。同コンクールは平成22年度から毎年継続している。令和元年頃より夏休みの課題対象外となり原画の応募数は減少しつつあるが、その中でもホームページを見た市外の方からの掲示依頼を受けるなど、ネットワークを介した広がりを見せている。
タバコの解剖
かいわれ草の発育くらべ
グループワーク「タバコを吸う?吸わない?どっちの大人になりたい?」
<取組事例3>
「児童相談所における性教育」 (神奈川県児童相談所)
性教育は、児童相談所保健師の重要な役割の一つである。性的な課題がある子ども、発達に課題がある子ども、施設を退所する節目の子どもを対象に、児童福祉司や児童心理司、施設職員、家族と連携協働し、子どもの生育歴や特性等を十分に考慮した上で実施している。プライベートゾーンや距離感、境界線、性行為のルール等に関することを、個々の子どもに合わせたテーマや方法で、性加害・被害の未然防止や、他者を思いやり自己肯定感を高めることを目指し行っている。更に、児童養護施設や障害児入所施設において、子どもや施設職員が知識及びスキルの向上を図るために、児童相談所保健師が必要に応じて集団教育を実施している。
児童相談所における性教育は、その時々の問題解決だけでなく、子どもの将来が健全で、虐待の世代間連鎖が繰り返されないための重要な予防的取組である。
性教育の媒体など
テーマや内容例
<取組事例4>
「小田原・箱根・真鶴・湯河原の1市3町若年性認知症を考える会の発足と取組」(小田原保健福祉事務所)
若年性認知症の実態調査を医師会及び市町と共に管内医療機関等を対象に実施したところ、若年性認知症の普及啓発が必要とされたことから、「小田原・箱根・真鶴・湯河原の1市3町若年性認知症を考える会」を平成30年に発足した。本会は、市町・医師会医師・地域の医療機関・保健福祉事務所等で組織し、各機関の連携・共同体制のもと、若年性認知症への理解を深めるとともに、若年性認知症本人とその家族を支援し、若年性認知症への専門的治療・介護の向上及び福祉の充実を図ることを目的としている。若年性認知症本人やその家族等を対象とした交流・相談会や、関係機関を対象とした意見交換などを定例で開催している。令和3年度には普及啓発活動のひとつとして体験談集の書籍作成に取り組み、執筆には当事者の家族にも協力頂いた。現在は市町で開催される認知症カフェや家族会で若年性認知症の視点を取り入れるなど、活動に拡がりが見られている。
<取組事例5>
「新型コロナウイルス感染症における保健師業務と連携」(鎌倉保健福祉事務所)
令和2年2月に鎌倉保健福祉事務所管内で発生し、令和4年10月までで第7波を経験している。
保健師の役割として、発生届受理後、積極的疫学調査として現在の体調確認・感染経路の調査、濃厚接触者へ外出自粛等を案内し、患者の療養先を調整した。また集団感染が疑われる場合等、必要に応じ検体採取を医師とともに行った。さらに、陽性者が搭乗した航空機同乗者で濃厚接触者に該当する者に対しての健康観察も行った。患者・濃厚接触者の日々の健康観察を行い、必要時医療機関への受診調整を行った。また、福祉施設、学校、医療機関でのクラスター対策として、施設への聞き取り・現地調査と助言を行った。新興感染症に対する住民の不安の軽減に努めるとともに、管内関係機関と対策会議を開いて、情報共有や今後の対応の統一を図った。
所として対応するために、時間外・休日も含めて保健予防課保健師以外の他職種を含めた全所体制で対応すべく準備や所内調整を行い、職員が疲弊しないよう努めた。
健康危機管理が発生した際、保健師には様々な業務や住民からの相談が想定されるため、早期に所内体制を構築し、業務における対応の統一が必要となってくる。
県内(主に県域)で大規模災害が発生した際に、保健福祉事務所・センターの保健師による健康支援活動が迅速・安全・的確に実施できるよう、平成30年3月に改定した神奈川県保健医療救護計画に基づき改訂しました。
PDFダウンロード研修体制
平成29年3月に、「神奈川県保健師の人材育成ガイドライン」を作成し、保健師の人材育成や、職場環境づくりをしています。
また、専属で先輩保健師がついてフォローする、プリセプター制度をとっています。
さらに、キャリアや業務内容に応じた研修を受講することができます。
平成29年3⽉に作成した「神奈川県保健師の⼈材育成ガイドライン」にて、新たに保健師のキャリアパスとキャリアラダーを定めたことから、新任保健師指導マニュアルの内容もキャリアラダーにあわせて平成31年3⽉に改定しました。新任保健師を採⽤1〜3年⽬とし、新任保健師を⽀えるプリセプター(先輩保健師)等の役割も明記しています。
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