まず知っておきたいこと
「盲ろう者」ということばを聞いて、まず何を思い浮かべるでしょうか?「ヘレンケラー女史」が有名です。「ろう」は老人のろうではありません。耳が聞こえないことです。全く見えなくて聞こえない「盲ろう」の様子を、ある重度盲ろう者は、「光も音も届かない深い海の底で、箱の中に閉じこめられた状態のようだ。」と表現しています。
自宅にいても、テレビの画面は見えません、音も聞こえません。ラジオや新聞、すべての情報手段から閉ざされ、家族との会話さえも困難を極めます。単独での外出は危険が多く、絶望的な状況に置かれ、家の中で閉じこもっている人が大多数です。まさに、闇と沈黙に包まれた孤独な生活を送らざるを得ない状況と言えるのです。
盲ろう者とは…
全国盲ろう者協会(東京都新宿区)では、「身体障害者手帳に視覚と聴覚の両方の障害が記載されている人」を「盲ろう者」と呼び、次のように区分しています。
盲ろう者のコミュニケーション
盲ろう者は、その人の生活環境や障がいの程度や障がい発生時期により、通訳の方法がひとりひとり異なるのが大きな特徴です。
コミュニケーションのとりかたは…
一般的には、大きく分けて「手話」「点字」「手のひら書き」「音声」「筆談」「指文字」「その他」に分類でき、盲ろう者は、これらの中から一つ、あるいは複数の方法を組み合わせて会話をしています。
手話
手話を使ってコミュニケーションをしていた人が、その後、目も不自由になった場合多く使われます。基本的には聴覚障がい者の間で普通に使われている手話ですが、個々の盲ろう者に適した方法に若干の工夫が必要です。
いずれの場合でも、できるだけゆっくり、はっきり、そして小さな動きで表現することが必要です。
- 盲ろう者が全盲の場合…相手の手話が見えませんので、盲ろう者は、相手の手に触れて、表している手話の形を手で読みとります。(触読手話または触手話)また、相手が盲ろう者の手をもって、盲ろう者自身に手話を表現させる場合もあります。
- 盲ろう者が弱視の場合…その盲ろう者の見える範囲で手話をします。(接近手話または弱視手話)
点字
視覚障がいで点字の読み書きに習熟していた人が、のちに耳も悪くなり盲ろうになった場合に多く使われ、次の2つの方法が主に使われます。
- ブリスタ…ドイツ製の速記用点字タイプライター(キーをたたくとすぐにそれが紙テープに点字となって打ち出されます。)
- 指点字…点字タイプライターのキーの代わりに盲ろう者の指を話し手が直接たたく方法。(特別な道具の必要がなく、正確・迅速、また歩きながらでも伝えられる方法であることから、今後、利用者は増えると思われます。主として、両手の人さし指・中指・くすり指の6本を点字の6点に見立てて使用します。)
手のひら書き
盲ろう者の手のひらに文字を書いて伝える方法です。一般的には話し手の指で、盲ろう者の手のひらに書きます。また、話し手が盲ろう者の指を取って、もう一方の手のひらや机などに書いていく方法もあります。
この手のひら書きはかなり多くの盲ろう者に通じ、誰でも話しやすいという長所がある反面、時間がかかり、伝えられる情報量が限られているという短所もあります。
音声
盲ろう者に聴力が残っている場合、その盲ろう者が聞こえやすいように耳元や補聴器のマイクなどに向かって話す方法です。盲ろう者の聞こえの状態により、声の高低、強弱、速さ等十分な配慮が必要です。
筆談
盲ろう者に視力が残っている場合、紙等に書いて盲ろう者に伝える方法です。盲ろう者の見やすい大きさ、太さ、色、間隔などを考慮して書きます。手のひら書きと同様の短所・長所があります。
指文字
大きく分けて次の二つがあります。
- 日本語式(50音式)指文字…日本語の手話の指文字を盲ろう者の手のひらの中でさわらせて伝えます。
- ローマ字式指文字…ヘレン・ケラー女史が主に使っていたアルファベットの指文字をロ-マ字表記で表し、盲ろう者の片方の手のひらの中でさわらせて伝えます。
その他
身振りサイン…1から6までのコミュニケーションサインが分からない人(盲ろう児など)が家族等と生活の中で打ち合わせて造りあげた動作のことです。例えば、お腹が空いたときに食べるしぐさをしたりすることでお互いにコミュニケーションを図ることができます。
サポートの方法…まずは、盲ろう者に話しかけてみてください。
まず、盲ろう者の肩にそっと手を触れて呼んでみてください
盲ろう者は振り向いてくれるはずですから、やさしく手を取って、何か手のひらに書いてみましょう。まずは、ひらがなで。だめだったら、カタカナで。。。
盲ろう者の大多数は、手のひらに文字を書いて通じます。とにかく盲ろう者の手をとって、何か文字を書くことから始めましょう。
盲ろう者と話すときに気を付けること
いつもどこかに触れて、隣にいることを示してください。
たとえ1センチメートルだけ離れていても、盲ろう者にとっては真暗闇に一人ポツンといることと同じです。盲ろう者と二人だけの会話ではなく、他の人の発言も伝えたり、周りの状況も説明するといいでしょう。
大切なこと
盲ろう者と話をする時に、いちばん大切なことは、盲ろう者と自分が話すだけでなく、他の人の発言や周りの状況の説明をすることです。例えば、「赤い花が道に沿ってたくさん咲いています。ちょうちょうが花から花へとまっています」とか。
「盲ろう者と話しがしたい、友達になりたい」という「心」があれば、きっと相手に伝わることでしょう。
肩の力を抜いて、あなたのできる範囲内でのサポートを!